第4話 いざ行け彼の国へ
プロペラ音が爆音で存在をアピールしている。
「しっかしそちらさんにしてはすごい勢いで話進みましたよね!」
「こっちとしてはお前がくっついてくることに驚きだがな!」
自然話し声も大きくなる。
「え、単身で乗り込めるとでも思ったんっすか?」
「おまえはその減らず口をなんとかしろ!」
「お二人とも!そろそろ口を閉じないと舌噛みますよ!」
閉鎖空間でイレギュラーな存在として扱われていた役人と記者は、そろって医師から一喝された。
休憩時間終了間際、隠岐田は共有スペースに上司を呼び出した。
つまらない話だったらぶっ飛ばすと目を血走らせた相手を正面に、隠岐田は加東から得た情報を開示。
緊急の会議を経て、相手方との交渉人として任命された。その間、わずか1日。
「だからなんでおまえがコーディネーターなんだ、おかしいだろ!」
「送っていただき、ありがとうございましたー!帰りはなんとかしますんで~。…………ほら、挨拶は大事っすよ、ドクターヘリに乗せてもらったんっすから」
はっとして礼を言おうにも、彼らは現場へ向かったあとだった。
調子が狂う。
「僕が地方紙やローカル局の記者に顔がきくからって話、またしたほうがいいですか?」
「いや、もういい」
人脈の広さは折り紙つきだ。
加東の立ち位置がはっきりしない懸念もあるにはあった。
けれど、共にいたら、あちらにも知り合いくらいいるに違いない。悪いようには扱われないだろう。そんな打算で上はコーディネーターという肩書きをつけ、同行にゴーサイン。
「で、四国に降り立ったわけですけど、どういう経路を検討中で?」
「陸路」
加東は初めて怪訝な顔をした。
兵庫県は、京都、大阪、鳥取、岡山と隣接している。北は日本海、南は瀬戸内海に面している。
「鉄道網は軒並み折り返し運転をしてますよね。県内は動いてるらしいですけど、新幹線やその他の私鉄、県をまたいでの運行に支障が出てる」
「貨物の他に、高速道路も全滅だからな。かといって空路も海路もドローン飛ばして警戒されてる。残されてるのは淡路島通って行くルートくらいだ」
「……橋は、確かにありますけど」
「突っ切れるとは思ってない。ダミーの医療用車両だって、いつかはばれる」
用意された医療用車両は、ゴーストタウンとなった元自治体を警戒警備する専門職員を運ぶためのものだ。
駐在場所は基本的に人里から離れている。そのため、体調を崩した等で要請が入ると、近場の医療機関が医師らを派遣する。
最近はドクターヘリだが、以前は車も主流派だった。
「見つかるのは好都合だ。相手の懐に飛び込む」
車に乗り込み、手早くシートベルトをしめる。
「銃撃されないことを願いますよ」
加東も助手席へ乗り込み、バタンとドアを閉めた。
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