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穏やかな平日のゲームセンター————
平日のゲームセンターに来るのはほとんど高齢者や学校が休みの子供たちくらいである。
————なんだけ、人が少ないわね。
女店長はカウンターの席に座って、平和なゲームセンターを見つめていた。
————まあ、平日だけであってこういうものよね。甲斐君はしっかりと働いてくれるから安心なんだけど……。
「すみません。千円札でメダルくじをやらせてもらえませんか?」
目の前に千円札が置いてあった。
「げっ‼」
店長は嫌な声を上げた。
目の前にいるのはまたしても里菜だった。
————て、店長。か、彼女は‼
————え、ええ。店のブラックリスト№8 山田里菜だ。
「すみません‼」
里菜は店長に話しかける。
「あ、すみません。せ、千円ですね。二回どうぞ」
店長は千円を受け取ると、箱の中に入っているくじを目の前に出した。一等はメダル二千枚。二等はメダル千三百枚。三等千枚である。
里菜は右腕を箱の中に入れて、右手で二枚つかみ取る。
「…………」
「…………」
二人は里菜が何を引くのか真剣な眼差しで見つめていた。
「あ、当たった……」
と、里菜の口からそう言葉がこぼれる。
「「な、何ぃいいいいいいいいい!」」
二人は店内で大声を出した。客は何事かと、二人のいるカウンターに目を見る。
「はい、合計で四千枚。すぐに用意してね。あ、そうそう、二千枚と二千枚に分けてね。お願いします」
里菜の引いたくじは、箱内にたった三枚しか入っていない一等のくじだった。
「は、はい……。分かりました」
店長はしぶしぶ四千枚を用意して里菜の手元に置いた。
「でも、お嬢ちゃん。一人で四千枚って大丈夫なの?」
「あ、大丈夫です。翔兄が向こうで待っているので……」
「え?」
里菜が指さす方を見た。すると、そこには次男である翔太郎の姿があった。
————て、店長‼
————おぃいいいいい! 一人でも大変なのに今日は悪魔が二体現れたよ!
店長と甲斐は、また、絶望感に押しつぶされそうになった。
「さてと、小遣い分しっかりと稼いでもらおう」
里菜は小声でいい、翔太郎の所へ向かった。
三時間後————
「あの子たち帰った?」
「さあ? 店長、俺はみていないっすけど……」
二人が話していると、向こうの方でざわざわと人が集まっていた。
「がっ‼」
二人が振り返ると、翔太郎と里菜が二人揃って、メダルを手持ちの二、三倍以上に増やしていた。
————今夜は一緒に反省会でもしましょう。
————ラジャー……。
二人は無き目半分になり、落ち込んでいた。
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