第2章  ゲームセンターの憂鬱

2-1

 とあるゲームセンター————


 ————ふむ。今日はほぼ勝率が高い。


 女店長はユーフォ―キャッチャーの商品の減り具合を確認しながら納得していた。


「甲斐君」


「はい」


 女店長に呼ばれた若い男性店員は返事をした。


「今日は今のところ安全だね」


「そうですね。一応、儲かっていますよ……」


 と、ひそひそと話しをする。


 すると、そこにある人物が姿を現した。


「‼」


 甲斐はその人物に気づき、店長に報告する。


「店長‼ 最重要人物が店内に入ってきました!」


「了解‼ 彼女の行動をチェックせよ! 今日は絶対に勝つんだ!」


 その人物こそ山田家四兄妹の一番下である次女の里菜だった。


 彼女はゲーマーであり、特にユーフォ―キャッチャーは得意分野である。


「よし、今日の武器は三千円。いくつ取れるかな?」


 里菜が最初に目をつけたのは、今日入荷したばかりのフィギュアだ。


「あれは……取れば高値で売れそうね……」


 そう、里菜のもう一つの顔は転売ヤーである。


 取った商品をすぐにネットのオークションにのせ、金を稼ぐのだ。


 ————店長、今日入荷したばかりのフィギュアに目をつけられました!


 ————焦らないで甲斐君。あれを取るのにはせいぜい、五百円以上使わないと無理な位置に設置しているわ!


 と、二人は目で合図を送る。


 里菜はさっそく、配置とアームの動きや強度を調べると、試しに百円入れる。


 ユーフォ―キャッチャーは、里菜に操られたままに動かされ、ゆっくりと商品に近づく、そして、アームが箱の隙間に挟まると、一気に持ち上げられ、そのまま元の位置に戻り、落とされた。


「な、何ぃいいいいいい!」


 二人は驚いた。


 ————てんちょぉおおおおおお!


 ————あ、慌てるな、まだ負けていない!


 二人は焦りだす。



 そして、開始されてから一時間後————


 山のように積み上げられたぬいぐるみの山をたった二百円で十五個ほど落された。


「て、店長……」


「あ、ああ。たった三千円で五十個以上の景品が持っていかれた……」


「そうですね。……と言うよりも彼女より長女の方がもっと怖いですよ」


「ああ、この家族は出入り禁止にはならないのか?」


 二人は溜息をつきながら肩の荷を下ろした。

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