8
ある週末の土曜————
いつもどおり雪乃は大学に提出するためのレポートを製作した後、そのまま意識を失いベットの中で寝ていた。
「は……?」
朝、目を覚ますと自分が今何をしているのか意識がはっきりとしないまま頭を掻き、大きな欠伸をした。
「……あぁああああああ! レポートを夜中中に終わらせるのを忘れたぁああああああ!」
と、大声で叫び、目覚まし時計を確認すると朝の八時を過ぎていた。
「やばい……。里菜、起きなさい! 部活送れるわよ!」
すぐに二段ベットから飛び降りて、一段目に寝ている妹の里菜の体を揺らし、その後、風呂場に向かった後、服を全部脱いで朝シャンし、すぐに朝食を作る。
「うるさいな……。朝からなんでそんなに慌てているんだよ、姉ちゃん。兄ちゃんは?」
「帰っていないわよ。それにうるさいは余計よ。あんた、時間見たの? もう、八時過ぎてるの、普通の人間は朝食を終えて活動している時間なの」
「あ、俺も部活あるんだった……。それよりもさぁ、兄ちゃんの事はいいの? 帰ってこないで心配じゃないの?」
「心配なんてないわよ。兄さんの事だから仲間と朝まで飲んで帰ってこないだけよ。こうなると、帰ってくるのはもうそろそろ……」
と、雪乃が言い出そうとした時、玄関の方から扉が開く音がした。
ガチャン!
「ただま~、今、帰ったぞ!」
と、スーツが乱れたままの姿で家に帰ってきた陽介が姿を現した。
「陽兄、酒臭い……」
起きてきた里菜が鼻を摘まんで、嫌な表情をした。
「兄さん、そんな酔っ払い姿で帰ってこないでください。近所にどういう目で、見られるか分かっているの?」
「いいの、いいの。他所は他所、うちはうちってな。あははははは……」
陽介は完全に酔っぱらった状態でリビングで横になっていびきをかきながら眠りだした。
それを見た雪乃は呆れながらコップに水を注いで持ってきた。
「兄さん、お酒というのは一種の薬物よ。もう少し、控えたらどう?」
「うるせぇ! 飲まねえと忘れたいことも忘れることができないだろうが! 女は黙ってろ!」
陽介は未だに酔っぱらった状態で雪乃の頬を叩いた。
「あ、やべぇ……」
「翔兄……これはちょっと家の崩落や台風後の後片付けが……」
翔太郎と里菜は、互いに抱き合いながら体が震え、恐怖におびえていた。
「兄さん、今、私を殴りましたね? 覚悟はよろしいかしら?」
雪乃は微笑み「ふふふ」と笑いながら、陽介を見下す。周りの空気が下がり、氷河時期がやってくる前触れだ。
「二人とも今日の朝食は自分たちで作ってもらえる?」
「「は、はい……」」
二人は声を合わせて、後退りをしてその場から退散した。
「兄さん! あなたは毎回毎回その酔っ払い方をやめろって言ってるんだろうが! ああ? 聞いてるのか、てめぇ! おら、起きろって言ってるんだろうが! いつも誰が家の事をやっていると思ってるんだ!」
凄まじい音と、雪乃の怒りが重なり合って最大震度7以上の災害が山田家を襲い掛かった。
雪乃がこうなってしまっては一週間以上、この緊張感が続く。
翔太郎も里菜も、この恐ろしさを知っており、いつもよりおとなしくなってきびきびと行動し、よい子になるのだ。
台風が過ぎ去った後、リビングは強盗にでも入られたかのような状況になっていた————
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