7

 ドドドドドドドドド————


 ダダダダダダダダダ————


「翔兄、うるさい‼ 静かにして!」


 里菜が自分の部屋の扉を開けて一階から叫んだ。


 だが、物音は収まる気配はない。それよりもその地鳴りが一回り大きく聞こえる。


「一体、何やっているの……」


 深々と溜息をついた里菜は、部屋を出て翔太郎の部屋がある二階へと階段を登った。


 部屋のドアを開けていると、銃声の音が響き渡っている。この壁は防音壁が弱いため、家の外には聴こえないが、家中には響き渡るようになっている。


 そして、コントロールキーを二台同時に操作している翔太郎の姿があった。


「翔兄、何してんの?」


「eスポーツに向けての特訓」


「そーいえば、今度そんな大会に出るって言ってたね」


 里菜は納得しながら頷いた。


「ぎゃあああ‼ また負けた! あの野郎、足を引っ張りやがって!」


「急に大声を出してどうしたの?」


「最後の五チームに残ったのはいいんだが、四方八方から狙われたんだよ」


「それはご愁傷さまで……」


 里菜はまた、溜息を洩らした。



 その日の夜————


「そう言えば翔太郎、準備の方は大丈夫なんだろうな?」


 夕食を食べている最中、翔太郎はサバイバルゲームの動画をチェックしていた。


「翔太郎、動画は後で見なさい!」


 雪乃が手を止めて動画を見ている翔太郎に注意をする、


「だって兄ちゃんとダブルスのサバイバルの大会に出るからどちらかが強くないと勝ち残れないんだよ」


「でも、兄さんは公務員よ。そこの所分かってる?」


 雪乃が馬鹿馬鹿しく思いながら陽介に訊いた。


「ああ、大丈夫。だって、賞金は全て翔太郎の手に渡せば俺には何も入ってこない。何も犯しはならないだろ?」


「陽兄、それはたぶん難しいと思うよ。その大会の賞金って確か一千万円だよね。優勝なんてできるはずないじゃん」


 里菜が肉と野菜を一緒に口の中に入れながら無理だと主張する。


「お前ら、金が入れば少しは楽になるんだぞ!」


「無理無理、あんたらが上位に残れるはずがないでしょ」


 雪乃は男どもがアホな話をするのに聞き飽きてきた。


 すると、背中に何かが当たっていた。


 後ろには銃を持った翔太郎が雪乃を狙っていた。


「ちょっと……あんた何やっているの?」


「食べ終わったから死角に隠れる習性が……」


「で、その銃は一体何?」


「いやだな……。化物退治用の道具に決まっているじゃないか」


 翔太郎が面白おかしく笑う。


「誰が化物だ! あ、逃げるな、翔太郎!」


 翔太郎は銃を持って逃げだし、その後を雪乃が追いかける。


「また、始まった。今年に入って二人の姉弟喧嘩は二十回を超えたよ」


 里菜は陽介に言った。


「それもそれでいいんじゃないの? あいつらにとってはスポーツの一種なんだし……」

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