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「さてと……。
「うん」
里菜は呼んでいた本をテーブルの上に置いた。
「早く行くぞ、俺、買いたいものがあるんだが……」
「ちょっと待って、今から準備するから……」
「と、言いながら三十分もかかるんだろ? 女って言う生き物は……」
ドスッ‼
鈍い音が聞こえた。
翔太郎の腹に里菜の拳がストレートに入っていた。
「ぐはっ……。て、てめぇ……」
「じゃあ、陽兄。行こうか。雪姉も行くよね?」
「そうね。今年も終わりだし、掘り出し物があるかもしれないわ! 服に食材、その他もろもろ全てをかっさらっていくわよ‼」
「翔太郎、大丈夫か?」
「ああ、なんとか……」
三人は雪乃を無視して、それぞれ行動していた。
「あ……」
雪乃は我に返って、頬を赤らめた。
IONショッピングセンター
四人は陽介が運転をして、買い物に来ていた。
「やはり、皆考えることは一緒って事ね……」
「俺、時間までゲームして来るわ……」
「俺も翔太郎と同じでゲームをしに言ってくるわ」
男二人は雪乃にそう言うと、さっさと二階にあるゲームセンターに向かった。
「里菜、私達は買い物でもしましょうか。それで、一体何を買うの?」
「本を買いに一人で買い物をする」
「ちょっと待ちなさい‼」
雪乃が慌てて里菜を止める。
「なんでそうなるの? あの使えない男どもはさっさと逃げてしまうんだからこういう時はなんて言うの?」
「手伝えばいいんだろ? 後で奢れよ」
「なめてんじゃないわよ。いい、ここは戦場なのよ‼」
「そうでした。ぜひ手伝わせていただきます。雪姉……」
胸倉を掴まれた里菜は、背筋が凍るように寒気がした。
————翔兄達、私をえさにしたな……。こうなったら……。
里菜は大人しく雪乃に従いながら隣で歩いて一緒に買い物をする。
肉や野菜などを選びながらカートのかごの中に入れていく、それを見越して里菜はジュースやお菓子をバレない程度に間に入れて言った。
「ふ、ふーん!」
「何入れてるの⁉」
雪乃は里菜がこっそりとお菓子を入れているのに気がつく。
————やばい、見つかった‼
「あ、そう言えば、卵がもう少なかったよね」
「そうだった、卵を買わな……って、ごまかさないの‼」
振り返ったと思ったら、すぐに里菜の方を向く。
「す、すみませんでした」
すぐにお菓子とジュースを持って元の場所に直す。
そして、卵を買おうとしている雪乃の場所に行き、里菜は深々と溜息をついた。
「はぁ……。ねぇ、いつになったら本を買いに言ってもいいの?」
里菜は退屈そうに低い声で言う。
「分かったわよ。もう、いいから本でも見て来なさい。私はあの二人を連れて向かいに行くから……」
心の折れた雪乃はそう言った。
帰りの車の中————
「それで、結局翔兄、メダルゲームはどうだったの?」
「最後の最後で負けた……」
「昔のよく言ったわ。ユーフォ―キャッチャーはある意味貯金箱だって……」
「そうですか……」
翔太郎は、負けたことに後悔していた————
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