巡らないの

 作:北見悠平


 赤い絵本の云うことには

 すべては流れ転がるものらしい

 もちろん、全部デタラメなんだろう

 ガリレオ・ガリレイは死んでしまったが


 君がそうして望む限りは

 誰もがここに眠る音らしい

 コーデュロイ、とても美しいんだろう

 早く寝た子はくたばってしまったが


 メタファーだらけになっちゃった世界では

 小窓から教授の遺骸が降ってくる

 心が熱くて刺されそうで死んじゃうので

 明日にも保険の券を切らなくちゃ


 詩でも吐いてなきゃ三つ編みにされる

 呟きに潰されてどこへも巡れないの

 言葉が言葉を読み込んでくる

 架けても会いしても廻りはしないから

 ほら、やっと少し楽になった


 計算科学に侵された日常じゃ

 昨日から時空公安がやってくる

 文字が裏切ってクビになって飛んじゃうので

 向こうでは巨匠のふりをしとくかな


 心を病んでなきゃツンデレにされる

 振る舞いに振り回されてここだと踊れないの

 子供が大人を呼び込んでくる

 おもちゃも愛嬌もさして売れないのに


 赤い絵本の云うことには

 すべては流れ転がるものらしい

 もちろん、全部デタラメなんだろう

 髭のおじさんが殺されてしまったら

 夜が巡らないの

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