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 作:北見悠平


 違いなんて知りもしないくせに

 欲しがったあのビンテージ・フロムアメリカ

 コンバースはもう懲り懲りなんで

 欲しいのはアドミラルのトリコロールカラー


 白い靴。汚れやすいとは聞いていた

 時は揺蕩うウォッチストップ

 宇宙服。着て持たぬとも知っていた

 那由多に映ゆるエバーグリーン


 くだらないことばかり気になるよ

 宇宙とか見ては月のデコボコを数えてる

 星占いにも慣れてしまったな

 遠くまで来てた虫の飛び方を見張ってる

 最後には真っ赤になって逃げたらしい


 後ろからも音がするんだとさ

 鳴り響く語彙サラウンドなのユニバース

 不協和音はもう十分だから

 血が通いすぎた鯉にも飽き飽きしてた


 古い夢。崩れかけだって知ってたら

 夏は揺らめくジャイロウェーブ

 理想郷。見ても届きはしなかった

 遥かに嗄れるドーンパープル


 つまらない声だけが聴こえてた

 試着室までは人のいざこざも届かない

 細身のジーンズ穿いてしまったら

 さっきまでしてた黒のストールが似合わない

 明日にも引き取り手配しておこうか


 全部嘘だったなんて誰が決めたやら

 色も音も何一つ消えてなんかいないのに

 手始めにポケットから取り出したるは

 へたくそな僕のハーモニカ


 また逢いたい。

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