コキュートスの夜

 作:北見悠平


 門出を祝う鐘の音

 どこまでだって行ける気がした

 深い処で眠ってる

 遠くの声が呼んだ気がした


 思い出すと非道いことば積み重ね

 射し込んだ音と光の象形図

 首を吊る紫色の歪んだ眼

 僕のこと許してくれればいいんだが


 水銀冬を決してくれ

 寒くて痛くてしょうがないから

 味も匂いも欲しくない

 記憶は未来の分だけでいい


 クオリアブルーの雨の色

 冗談みたいに沈む残響


 多動性衝動感情ぶちまけて

 自閉的コミュニケーション断ち切った

 首絞める罪とカルマの心拍数

 ことばにはできないこともあろうとか


 上限額を教えてくれ

 怖くて壊れちゃしょうがないから

 全部数字になるんだろう

 持ってたものを手放せるなら


 夜になったら空を見る

 風が鳴っては潮騒の歌


 蛍光燈を消してくれ

 眠くて痺れてしょうがないんだ 

 過剰な不安も欲しくない

 予定は明日の分だけでいい


 ここに足跡をつけておく

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