新興宗教「光の泉」①

 その日、ヨハネはかつての上官であるルシファーと共に、地上へ降り立ち、地球の状況を調べていた。最後の審判を迎えようとしている星とは思えないような、人々の浮かれように、ふたりはあきれていた。

「何で気づかないのでしょうか?」

「何を?」

「世界各地で天変地異の災害が頻発し、あちこちで第3次世界大戦に発展しかねない紛争が次から次と起こっているのに、自分たちだけは大丈夫と思っているなんて…」

 二人は今、ニューヨークのど真ん中いた。

 一応、人間でないことを悟られないように、最新ファッションに身を包み、サングラスで顔も隠しいた。本人たちは、上手に人ごみにまぎれ込んでいると思っていた。しかし…、突然、車が走る道路の真ん中で、ルシファーは立ち止ったのだ。それは信号の変わりめのことで、先を歩いていたヨハネはそれに気づかなかった。

 ルシファーはビルの電子掲示板に写しだされた宣伝を偶然目にして驚き、横断歩道の真ん中で立ち止った。

「私たち光の泉は、いつもあなたと共にあります」そのようなキャッチフレーズのもとに、教祖と思われる男がにこやかに笑っている。「神の愛はいつもあなたを包み、あなたと共にあります」

 その教祖の顔に、ルシファーが見覚えがあった。

 かつての部下、そして同僚だった統治神<シ>の右腕、大天使ミカエルだったのだ。そこへ一台の車が猛スピードで、まるでルシファー目がけて突進してくるかのように近づいてきた。そしていつも冷静なルシファーにしては珍しく、その車に対して封印していたフォースを使ってしまったのだ。

 初めて異変に気付いたヨハネは、

「ルシファーさま、ダメです。ここでフォースを使ってダメです」と叫んだが、すでに後の祭りだった。車は回転しながら空中を舞い、信じられないような轟音を残し、まるで爆弾で吹き飛ばされでもしたかのように粉々に砕け散った。






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「光の天使」地球編  来夢来人 @yumeoribitoginga

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