土曜日15 シャンディガフとレッドアイ

 今夜は久しぶりに手品人と飲みに行く。

 何を着ていけばいいのか迷ってしまう。ろくに着るものがなかった。トランクスと靴下とシャツとジーパンとジャージしか持ってない。もう外出する機会もそんなにないだろうと思って、不要な服は全部捨ててしまったのだ。

 仕方がないのでマジックするときの仕事用の衣装をTシャツの上に羽織った。


 夜。家を出る。近所の酒屋でスミノフアイスを買って電車の中で飲む。気心のしれた仲間と会うというのに、どうしてこんなに緊張しているのだろう。わたしは嫌われたくないのだ。彼らに嫌われたくない。出来るだけ陽気な自分を見せたい。だから、会う前にこうしてお酒を飲んで気分を良くするのだ。嫌われたくない。愛されたい。でも、きっと、いつか、わたしはきっと独りになるだろう。


 シャンディガフとレッドアイが好き。いっぱい飲む。わさびだけの巻き寿司が美味しくてたまらない。ピザも美味しいし、チヂミも美味しい。そして美味しい食事を食べながら、お店に来ているフツーのお客さんにマジック見せる。わいわい騒ぐ。自分の好きなように。やりたいように。相手の感情を抱きしめながら。わたしはマジックが好き。人も好き。みんな大好き。好き好き大好き。

 愛してる。




《ほんとうに?》

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