第14話 ユニコーンに乗って
ベルンハルトのいる街を離れ、亮太、ジャスティン、フィーネの3人は大陸の西にある、ブリジット王国目指して旅に出た。
食料も持てる分だけ持ち、後は近くの村で補充する予定である。
移動に時間がかかる為、ベルンハルトから移動の手段として魔物を2匹借りた。
馬に似たユニコーンという白い魔物で、額にデカい角を生やしている。
立派な体躯をしていて、馬より少し大きい。
2、3人乗せても疲れを知らない馬力の持ち主なのだ。
長旅には丁度いい。ブリジット王国までユニコーンの脚力なら1週間ぐらいで着くそうだ。
この大陸には色々な魔物がいるが、危険な魔物は魔獣と呼ばれ恐れられている。
しかし、人間と共存している魔物も少なからず存在するらしい。
ちなみに魔人にも多くの種族があり、人間と敵対しているが、共存する種族なども存在する。
エルフ族やドワーフ族はその典型といえた。
魔人、魔物とは人間が忌み嫌う存在であり、魔力というエネルギーで生きている生物の事を言うらしい。
ただ、人間も覇気から魔力を作り出す事ができたり、人間から魔人になった例もあることから
魔人とはいったいなんぞや、という議論が活発化しているそうだ。
さて、このユニコーンに乗って旅をする事になったのだが、
「この馬に乗っても大丈夫なのか?」
ユニコーンに乗ったことのない亮太は恐る恐る聞いた。
かなり気性が荒いのか、フッフッと鼻息が荒く、首を何回も振って落ち着きがなく見える。
「見た目はゴツイし気性は荒いけど、人に優しい馬なのよ。私は5歳の時から乗っているし、大丈夫よ。
よく人を見ていて、乗り手を選ぶ所もあるけど、優しく乗ってあげてね。リョウタもきっと気に入られるわ」
「リョウタ、武人になろうと思うなら、ユニコーンぐらい乗りこなさないとな。この魔物は初心者向けだぞ」
ジャスティンは軽口をたたく。
「あら、君は大丈夫なのかな?」
「当たり前だ!俺は魔獣でも乗りこなせるぞ」
「凄いのね~!!」
「お前、絶対俺様を子供扱いしてるだろ!」
「だって、ねぇー、子供じゃない、ふふ」
フィーネはジャスティンをからかって笑っている。
亮太はジャスティンの肩をポンポンと叩いて
「まぁ、見た目が全てだからさ」
とフォローになってない言葉をかけて旅路を促した。
亮太とジャスティンが1頭に乗り、もう1頭にフィーネが乗った。
ジャスティンが手綱をしぼり、快走する。
亮太は後ろでジャスティンにしがみついていた。
フィーネもそれに続く。
素晴らしいスピードで、ユニコーンは疾走した。
時速にすると60キロぐらいは出ているだろうか。
見る見るうちに街から離れていった。
道は途中から岩肌になり、かなり荒れている。
だが、ユニコーンは速度を落とさない。
亮太は馬でもこんなに揺れる事無く、快適なのかな。とふと考えていた。
森に入るとけもの道みたいな所を通る事になった。
太陽がジリジリと肌を焦がす。
夕方になり、休憩する事になった。
ユニコーンに水を飲まそうと、森の川辺で一度止まったのだった。
ユニコーンに水を飲ませている間、亮太はフィーネが浮かない顔をしているのに気が付いて、心配した。
「どうしたの、大丈夫かい?」
「あ、うん。そうね、ちょっとね」
思案顔をしてながら、言葉を続ける。
「私たち、もしかしたら……、誰かに付けられているかも……」
「え、僕達が?」
亮太は周りを気にして、神経を集中してみたが何の存在も感じなかった。
「何も存在を感じないよ?」
「今はそうね、でも、街を出てすぐぐらいの時と、先ほどちょっと気になる覇気を感じたわ」
その言葉を聞いて、亮太はジャスティンがどう思っているかと、彼を見た。
ジャスティンは亮太と目が合うと何故かぷいと目を逸らす。
あ、ジャスティンも何か知っていそうだぞ、と亮太の頭の中で警報が鳴る。
こういう態度をジャスティンが取った時は、何か知っているに決まっているんだ。
「ジャス、何か心当たりあるんじゃないだろうな?」
「いや、知らないぞ。獣人達が追ってきているなんて」
「……ジャス、何を知っているんだい」
亮太はズズイとジャスティンに迫った。
ジャスティンは亮太に迫られ、言い逃れも面倒くさくなったか、嫌そうに口を開いた。
「ちょっとな、亮太達に会う前に因縁をつけられ、相手した連中がいてな。
その連中が追いかけてきているんだと思うぞ」
髪をかきあげ、ふぅとため息をつく。
「因縁をつけられたって、何をされたんだい?」
更に問われ、やれやれ仕方ないという感じに首を振り、ローブから水晶を取り出し、
「この水晶を盗んだだけだぞ」
と開き直った。
「「お前が悪いんじゃないかーーー!!」」
亮太もフィーネもつい叫んでいた。
「じゃあ、なにか。水晶を取り戻しに俺たちを追跡している者達がいるって事か?」
「返してあげたらどう?」
ジャスティンは人差し指を左右に振り、これは大事な物だから無理っとのたまっていた。
「リョウタ、この水晶はお前の右腕の封印を解く鍵になるかもしれんのだ。解きたいだろ、封印?」
「え、右腕の
「そうだ、その可能性はあると俺様は思っている」
「右腕の封印? 刺青の事? 気になってはいたけど、何か秘密があるの?」
フィーネも関心を持ったのか、亮太の右腕を眺めながら聞いてきた。
亮太は右腕の刺青に関する話をフィーネに聞かせた。
「ふーん、そうなんだ。そんな秘密があったのね」
ジャスティンは今度は雄弁に語りだす。
「そうだ、俺様はリョウタの為に、封印を解く為に、この水晶を命を張って取ってきたんだ。うんうん」
と、褒めて欲しそうに亮太を見る。
亮太は、しかし盗みは駄目だろと頭を振りつつ、ジャスティンに問いかけた。
「それで、追ってきている奴は人間じゃないって事なんだな?」
「そうだ、魔人や獣人たちだな」
「今、この近くにはいない?」
「うむ、今はいなさそうだ。ちょっと距離を置いてついてきているみたいだが。ユニコーンの速度についてきてるのを見ると、近いうちに相手する必要がありそうだ」
ジャスティンはにっと笑い、怖いか? と逆に聞いてきた。
はー、と息を吐きしょうがないかと覚悟を決める。
「魔人たちを相手にするのは、2回目になるな。でも、今度は負けないよ」
亮太はロングソードにそっと触れる。
フィーネも少し呆れた顔をしていたが、
「リョウタが戦うと決めたなら、私も力を貸すわ」
と言ってくれた。
戦うなら少しでも広い場所へ移動しよう、という事になって、森が開けた場所に移動し敵を迎え撃つ事になった。
亮太にとって『覇気』を身につけてから、初めての戦いになる。
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