第3話 白雪さんと要真治

「カフェに行ってお茶して帰りました!」

自信満々にそう言う白雪さん。

「あぁ、そう…ヨカッタネ…」

白雪さんがモテ男こと要真治に告白した次の日の夕方。相も変わらず2人で誰もいない教室で喋っていた。

「てか、惚気話の為に今日集まったんだっけ?」

「違いますよ!作戦会議です!」

いやいや。

「作戦会議って……何の?恋の手助けとか必要なかったじゃん。あっさり要真治と付き合えちゃったし。」

「そこなんです!私の独自りさーちによるとですね!恋というのは、相手のことしか考えられなくなったり!他の人と仲良くしてるのを見てモヤモヤしたり!ご飯が食べられなかったりするものなんです!」

「へー……その少女漫画で勉強したの?」

「わーーっ!勝手に見ないでくださいよ!」

バックの端から思いっきり出てりゃあ嫌でも目に入るわ。とは言わないでおこう。

「平木さんも読んでみます?めちゃくちゃ面白いんですよこれ!はいっ」

どき☆ワク!?らぶラブCANDY☆―――………

ほんとに面白いのかこれ、タイトルが謎すぎて逆に中身が気になる…

「ありがとう読んでみる」

借りることにした。

「えへへー♪」

なぜか満足そうだ。

いや、こんなほっこりしてる場合じゃなくて!

「作戦会議は!?」

「そうでした!!あのですね!

ドキドキしないんです…要さんと一緒にいても…

あのシチュエーションは何度も漫画で予習済みだったんです…ぶつかったのがきっかけで後に付き合い出すという…

漫画通りにできるようにやってみたんですけど……」

そりゃ漫画の中だけの話だし、しかも見ず知らずの相手じゃなぁ……

言おうとして辞めたのは、あまりにもどうしたらいいのか分からないといった表情をしていたから。本気で助けを求めているような表情だったから。

「……ま、まぁ…それは…相手の事知らないからじゃないのか?」

当たり障りの無い事を言うしかなかった。

これでアドバイスになっているだろうか。

「なるほど…そういう事だったんですね…!!」

なっていたらしい。

「わかりました!ちょっと今から要さんに会いに行ってきます!」

言うと同時くらいに駆け出していく白雪さん。

ほんとに大丈夫だろうか…

まぁ、こればっかりは俺がどうこう出来ることじゃないしな…

俺も帰ろ。

借りた漫画をカバンにしまいながらふと思い出す。

あ、そういえば今日新刊の発売日だったっけ。

帰りに買って帰ろうかな。



―うし、じゃあ帰るか

目当ての本を買い、揚々と本屋を後にする。

が、次の瞬間俺は自分の目を疑った。

あれって、要……?

目の前を通り過ぎたのは紛うことなき要真治だった。

隣には見ず知らずの女子。

え、あれ…誰だあの女子生徒…ウチの学校の生徒じゃない…

てか、白雪さんは…?会いに行ったんじゃなかったのか…?

疑問と疑惑がふつふつと湧き、気づけば2人の後を追っていた。

仲睦まじく話す2人の後ろをコソコソと後をつける男。

誰がどう見ても不審者そのものだろう。

どんどん表通りから遠ざかってくけど

この先になんかあったっけか…?

気づくと同時に俺は後悔した。

1人で突っ走る白雪さんを止めなかったこと。

要真治という男をよく知りもしなかったこと。

そして、2人の後を付けてしまったこと。


高校生がサカってんじゃねーよ…

2人の姿が消えたのはラブホテルだった。

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