19
――傷が、ない。
そこには目を疑わずにはいられない奇跡が起きていた。
神狼族の治癒能力は人間より高い。
しかし、白火の足の
「不思議なことがあるものね……?」
白火はふと青年の言葉を思い出した。
――『傷を見るな。目を閉じろ』
あの時、彼はそう言っていた。
どうして傷を見てはいけなかったのか、それは彼なりの配慮だったのか。その後の生暖かく湿った感触、あれは薬を塗ったということなのだろうか。
「うーん……」
謎が深まるばかりである。
(ハンカチ、どうしよう…)
純白のハンカチ。白火の傷の上に巻かれていたはずなのに、傷に滲んでいたはずのそ血の跡はない。傷は巻かれる前に治っていた、ということになる。
(持ち主は…)
ハンカチの持ち主は青年。しかし、あの時、驚きのあまり彼の名をたずねることができなかった。
ハンカチを大きく広げ、彼の手がかりを探す。
「…!」
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