白と漆黒

15

「集落の外って、こんなところなんだぁー」


 白火はただ1人で、森の中を歩いていた。そこは集落とは違い、獣のにおいはほとんどなく、草木の青臭いにおいがたちこめている。しかし、白火とっては不快感はなく、どこか心地よかった。


「………………」

「……………………………!」

「…………………………」


 はっきりとは聞き取れないが、何かの声が聞こえた。


(まさか、一族の誰かが!?)


 バッと後ろを振り向くが、誰もいない。しかし、何かの気配は感じられる。


 ―――――ツンっ。


「!?」


 ―――――――ドサっ。


「いったぁ……」


 白火は何かの声と気配に気を取られ、何も無いところでつまづき、正面から転んでしまった。右のすね辺りがジンジンと痛む。起き上がって、見てみると、すぐそこにあったき出しの木の根に摩擦まさつして大きな傷ができていた。ジワジワと血がにじんでいる。


(見つかったら怒られちゃう…)



 ―――――――ッ。


「………!?」


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