探る影

14

「あっちがのすんでるとこかー」

「………」


 不知火一族の集落より少し離れたところ、深い森林の中。闇をまとう2人の青年がある樹の太い枝に腰掛けていた。1人は黒い短髪、もう1人は長い茶髪を後頭部で結いあげている。

 彼らはのために自らの住処すみかから遠く離れた付近に来ていた。


「兄貴はさ、カワイコちゃんに興味無いん?」


 茶髪の青年は黒髪の青年に話しかける。


「………」

「ちっとはなんか言うてくれよ!さみしいやないか!」


 しかし、黒髪の青年は茶髪の青年の問いに答えようとしない。答えようとしない、というよりは、考え事をしていて耳に入ってこなかった、といったところだろう。


「…ん」

「ん、じゃないわ、この冷血漢!そんなんだから吸k…」

「黙れ」


 


「ホントのこと言うて何が悪いねん!」

「…それ以上言うなら、貴様の、引き抜いてやろうか?」


 彼らにとっては必要不可欠なもの。

「それだけは堪忍や!」


 ――ガサガサ。


 彼らの下を、森の中を1人の銀髪の少女が歩いている。


「あの子、やん。可愛いなぁ」

「…下心丸出し、万年発情期か」

「ちがうわ!オレそんな変態ちゃうしっ」


 2人は少女に聞こえないよう、こそこそと声量を落として話していた。


 ――ドサっ。


「いったぁ……」


 少女が何かにつまづき転んだ。彼女の血の匂いが、極わずかではあるがうっすらと辺りにただよいはじめた。


「あらら」

「…………」

「ちょっ…、兄貴!?」


 1人の青年がその場から飛び降り、少女の元へ近づいていく。

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