12

「…どうして、私だけ集落の外へ出ては行けないのですか。私と朧は同じおとうさまの娘なのに」


 白火は納得出来ていない。朧とは、歳も、髪色も、目の色も、肌の色も、産まれた時と声以外はほとんど同じ、双子。先に産まれたから、そういう理由だけでひとつの自由を奪われるのは、白火にとって理解し難いのだ。


「…口答えするのか」


(そうしたいわけじゃない―――!)


「いいえ、私は理由が知りたいだけです」

「前にも言っただろう、お前は不知火の、俺の後継者だと。先代の定めたおきて、これは後代がじ曲げてはならんのだ。言わば、憲法のようなものよ。わかったか」


 この前きいたときと同じ答え。それはもう聴き飽きていた。


「…朧の方がリーダーシップあるのに」


(私にリーダーの素質なんてないのに…)


「無いなら、代替わりの時までに身につければいい」


 何が何でも後を継がせようとする父親。白火はそれが気に食わなかった。

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