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「集落の外は安全じゃないのね…」


 父親と叔母たちの話し合いが終わり、陽葵たちが帰った、夕飯前の黄昏たそがれ時。

 白火はだいだい色に染まる空を見ては項垂うなだれ、溜息ためいきいた。死ぬまでに集落の外を、自らの目で見ることも、耳で聴くことも、触ったりすることもできないのだと。


(それでもなんとかして外に出られないものかしら)


 ―――コンコン。


「白火」


 ドアを軽く叩く音とともに、白火の名を呼ぶ父の声。


「はい、おとうさま」


 白火は父すぐに返事する。


「話があるから、あとで居間まで来なさい」

「わかりました」


(いつもは朧が呼びに来るのに。おとうさまがじかにくるのはどうして……?)


 父が直接白火に用を伝えに来るのは、朧が不在か説教の知らせくらいだった。だからこそ、彼が直接用を伝えに来たのが不思議でたまらなかった。


 白火は父の指示通り居間へ向かった。

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