05

「どうしたの、おぼろ?」


 白火と朧。神狼の不知火一族の長、不知火ほむらの双子の娘でよわい17の華奢きゃしゃ乙女おとめである。不知火一族の中では一際美しい毛並みをもっているが、今は人の姿をとっているため、毛並みの美しさはその白く輝きを放つつややかな長い髪に表れている。


 白火は双子の姉、すなわち朧の姉であり、長女である。一族の長はその第一子にが継ぐという先祖代々からの掟より、彼女はそれにのっとり長を継ぐように運命さだめられている。

 よって過保護な父親の命により集落の外へ出ることを許されず、外を知るすべは集落の誰かか、父親を訪ねてくる同種族の話しかない。自身の目で見たり、耳で聞いたり、足でその地を踏んだり、といったことができない。よって、白火自身が直接知る事はできないのだ。


(私に用があるのは誰かしら…)


 基本的に白火への用事は朧から伝えられている。用事のある人物が白火のもとに直接来ることは滅多にない。直接来ることができるのは朧と父のみである。

 朧の私用か、父からの伝言か、もしくは不知火の誰かか。それとも客人か――――。

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