第6話 王の名

私がこの国に来てから

半年が経っていた


一人書斎でアリュメトの歴史を振り返っていた

歴代の王達の記録

名高い騎士の武勇を記した本

様々だ


『初代国王

アリュメト・アラント』


剣と知性をもって国を成し

ドラゴンクイン平野の戦いで

サパール軍の兵二万をわずか五千の兵で打ち負かす



『次代国王

アリュメト・アルカン』


先代の王ほど目立った

武勇は見られないが


現ウォーナー鉱山にて

鉱山を発掘

アリュメト国は

鋼を大量生産

国外との貿易ラインを強固な物とし


鋼鉄の都 アリュメトと言われる程に栄えさせる



『三代国王

アリュメト・アルカン二世』


父王アルカンの教えの元

さらにアリュメトを発展


戦では王自ら先陣に立ち

兵一人一人が乗馬に長け

戦では敵を縦横無尽に蹂躙せしめる


鋼鉄の国にして新たに

騎士王国アリュメトと冠される


国力の高さを示すため

山々を切り開き

その中央に大量の鋼をもって


鋼鉄の城 アリュメト城を築く


この城は以降三百年間

難攻不落の城として名高い


それからも

私は歴史書を読み進めていったが

アルカン二世のページが一番分厚かった

どうやら三代目の王が

この国の象徴人物らしい


『現国王

アリュメト・タイエン』


アルメンドロスの父君だ


タイエンは本来

継承権は無く

先代の王と侍女との間に生まれた落とし子である

しかし

若きに正統後継者である長兄と次兄は戦死

その先代の国王も病に伏せ

新たに子を成せなかった

それゆえ腹違いのタイエンに白羽の矢が立つ


宮殿外で育っていたタイエンは

玉座につく条件として

平民の娘 サシャを妻として娶ることを要求

王室と先代国王はそれを承諾し


先代亡き後タイエンは玉座についた

その翌年に

長女

アルマが生まれる


しかしこの王政に不満を持った

先代国王の弟アルキントがクーデターを起こし

アリュメトは長きに渡って内乱状態に

タイエンは七年の月日で内乱を制し

なんとか国を治めるが

アリュメトは疲弊し国力を大幅に低下させる

その翌年

アリュメトにカルーラ王国が侵攻

疲弊したアリュメト王国は

成すすべもなく

カルーラ王国に敗北

鋼鉄の城と名高い

アリュメト城はカルーラに占拠され

大量の鋼を生産していた

ウォーナー鉱山もカルーラの手に渡り

当時八歳であったアルマ姫を

カルーラの養子とすることでこの戦争は終結

その戦の最中

身重であった王妃サシャは栄養失調状態であったが

出産を決行し

王子の出産と同時にこの世を去った









ガランサス!!!!








名を呼ばれた私は思わず本を閉じた

振り返ると



王子アルメンドロスがいた



アル様…

急に叫ばれると心臓が止まります


事実私は心拍数が上がっていた


何を言ってるんだ

ガランサス

出会った時は恐れる者などなにもないという感じだったぞ


出会った時というのは

私が火あぶりにになる直前の話だろう


アル様

私は怖がりな人間ですよ

ですから命を救ってくれたことに

感謝しているのです


そうかそうか

しかし傑作だったな

まるで猫のように飛び跳ねていたぞ


何故か得意げになるアルメンドロス

私は飛び跳ねてなどいないが


まぁそういう事にしておこう

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