第1話

 私、戸村とむらはるかは普通の小学四年生!

 運動は普通。勉強も普通。取り柄も特に何もない! ……むぅ。

 あと、えと……あ、好きな色はピンク! あと好きな食べ物はオムライス! 好きな遊びは……あ、ぅ……ぷ、プリペアごっこ……。

 ぷ、プリペアは女の子が変身して悪い人たちをやっつけるお話なの。お父さんに買ってもらったドレスと変身アイテムを使って、部屋で一人遊んでる……あ、う……恥ずかしぃ……み、皆には内緒だよ? もう四年生だし。子供っぽいって馬鹿にされちゃう。

 ま、まぁそんな私なんだけど、……今、悲しく思っていることがあるんだ。

 今ね、私のクラスではいじめが起きてるの。

 いじめているのは美咲みさきちゃんっていう女の子。女の子たちのリーダーみたいな人で、友達を連れて皆でやってるんだ。いじめられているのは百子ももこちゃん。ポニーテールなのに全然元気に見えなくて、いつも眠そうな目をしている子なの。でもね、いつも静かだから気づかないけれど、実はとっても可愛いの! それも、いじめられる理由なのかな? って、ちょっと思う。でも多分、一番の原因は、皆と仲良くしようとしない所なんだ。百子ちゃんはいつも無口で、誰とも友達にならなかったの。だから浮いちゃって、美咲ちゃんに目を付けられちゃったんだと思う。

 でも、相手が誰であっても、いじめは良くないよね! 百子ちゃんだって辛くないはずないもん! だから、いじめを止めさせたいって、私は思ってるんだ。

 ……でも、いざってなると、私には全然そんな勇気はなくて、いじめられている百子ちゃんを影から見ていることしかできないの。目の前にいるのに、いつも一歩を踏み出せなかった。美咲ちゃん、私も怖いし。

 私があれこれ考えているうちに、いつもいじめが先に終わっちゃう。その時、出て行かなくていいっていう安心感と、出て行けなかったっていう後悔が、私の中に同時に湧いてくるの。もし、いじめを見ているのがプリペアの女の子たちだったら、迷わず止めに行くんだろうな。そう思うと自分が情けなくって、悲しくなっちゃう。

 そう、思ってるからかな。いじめに満足した美咲ちゃんたちがどこかに行った後、残された百子ちゃんが立ち上がる姿を見る度に、私は思うことがあるの。『私が百子ちゃんみたいに強かったら』って。

 百子ちゃんはどんなにいじめられても泣かない。でも、喧嘩もしない。いつも平然と立ち上がって、いつもの眠たげな瞳で、教室に戻って行くの。その姿を何度も見続けるうちに、私は百子ちゃんに憧れるようになったんだ。

 私も、百子ちゃんみたいに強くなりたい! 百子ちゃんと、友達になりたいな。それが最近芽生えた、私の気持ちなんだ。

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