無為の幼女
月浦賞人
プロローグ
「ほらぁ。抵抗して見なよー」
少女は下卑た笑みを浮かべながら目の前で尻餅をつく少女の手を踏みつけた。取り巻きの少女が三人いて、彼女たちもその言葉に乗じて嗤う。
体育館の横。陰になっている部分の一般の通路からは見えない一角で、それは行われていた。
「あんたって抵抗しないよねー。反応しなければいつか終わると思ってんの? だったら逆に燃えるから、やめた方がいいよー」
少女は愉快気に笑って言うと目の前の少女の首筋を蹴った。蹴られた少女は息を噴き出すような声を出すが、意志を感じさせる反応は示さない。眠たげな半眼で、どこを見るでもなく呆けていた。
何をしても反抗の意思を示さない少女に、いじめる少女はだんだん冷めてくる。最後、足を大きく振り子のように振って、地面に尻を着く少女の鳩尾を蹴り飛ばした。
蹴られた子は「うぇ」と言って横に倒れ、苦しそうに身を丸めた。呼吸がうまくできない様子で、不規則に息を噴き出していた。
その姿を観止めて、蹴り飛ばした少女が言う。
「そのうち死んじゃうよー?」
地面に横たわる少女にそう言い残すと、蹴り飛ばした少女は取り巻き達を連れ、その場を後にした。
暫くして、倒れていた少女は正常な呼吸を取り戻して起き上がった。何事も無かったかのように、校舎内へと入っていく。
一人の少女がその一部始終を見ていた。胸に拳を当て、複雑な表情で、頬を赤く染めていた。
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