第12話 加護

「次にもっと早く強くなれるのが、加護を受けることだ」


「加護…」


「ここの加護は、敵意を持つ相手の一手目がわかる守護を授かれる」


心配そうなガリオンと別れ、クオードに連れてこられたところは、光の世界だろうか。わたしの屋敷からどれくらい離れているんまろう。

雲ひとつない青空と広大な草原の中を、この国の王子様に手を引かれて歩く。まるで少女漫画のような絵面だが、本来のゲームのことを考えると、内心はそんなに呑気ではいられない。だって、今はわたしがユーリになり悪役令嬢を回避するべく、次期魔王様との婚約を延期しているが、本来の設定では光の世界出身の勇者に討伐される対象なのだわたしは。…まあ、勇者が誰なのかは、プレイしてないしネタバレが嫌だったから全然調べてないし、知らないから警戒のしようがないんだけど。チュートリアルでも、勇者は誰か秘密の段階だった。


それにしても、虹色の蝶や、空から落ちてくるキラキラとした光がもうまさにファンタジー。光の世界というだけあって、色んなものがキラキラしてると思った。空も、虫も、自然も、国を治める王子様も。


転移した場所から少し歩いたところに、翼が生えた女性の像があった。周りには色とりどりの花が咲き誇り、すごくきれいだとみとれてしまう。


わたしが像の目の前にたつと、動かないと思っていた像がゆっくり動き出す。手に持っている水晶を、まるでわたしに差し出すかのように。


「それに触れて」


クオードの言う通りに、水晶に触れる。恐る恐る指を水晶に添えると、とても暖かい何かが小指に集まり、それはやがて細い指輪になった。


「ふむ、そんな風になるのか」


「えっ」


「俺は加護を受けても指輪にはならなかった。目に見えないが、感覚で加護があるとわかる感じで」


「へぇー」


人によってバラバラなんだ。指輪はわたしに挨拶をしているかのように、キラッと光った。

─どうも、貴重な加護とキレイな指輪をありがとうございます。

そんな想いを込めて像を見上げると、かすかに微笑んでいるような気がしないでもない。

まるで女神様みたいだね。とぽろりと零した感想に、クオードは少し笑った。


「みたいではなく、女神だ」


「え、ほんとうに?」


「光の世界は、女神信仰だから。いたるところに女神像がある」


石とは思えないほどやわらかく動いた女神像は、すっかり元の姿勢に戻っている。動かなくなった女神像に手をついて、クオードは話を続けた。


「─光の世界に、女神が舞い戻る時がある。と、そう信じている国民たちはたくさんいる」


「…へ、へぇ」


「この像のように、光の世界の随所に力を残していかれた女神様は、いつ、また舞い戻るのか?…熱い信仰は常に人々に希望と期待をもたらしてくる。特別な存在であるに違いない。もしかしたら、もうこの世界におられるのかもしれない。光の世界にとって特別な存在であることに違いない。ユーリ、君は」


え、ちょっとまってその話の流れはもしかして。


「…君が女神であってほしいと国民が望んでいるとしたら、どう思う?」

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