収録(2)
いや、なにも言われずとも責任を取ろうとはしていた。むしろ、責任を取ろうと固い決心をしていた。
でも。
だが。
しかし。
思ってた以上に、責任をなすりつけようとしてくるスタッフたち。
『ガンガン新谷さんが悪いって言っといたんで』『いや、むしろ家族を人質にして脅されたって言っときました』『私も言うこと聞かないと、ぶん殴るって脅されたって言っときました。どうぞ、お好きに』『そう言えばこの前の視聴率悪かった企画も新谷さんの発案だって言っときました』『この前予算が足りなかったのも新谷さんのせい』『この際だからいろいろヤバい案件も新谷さんのせいにしとこう』『他になんかないか他に』
て、てめーらよくそのカンペを俺の前で飛び交わせられるな。
言ったよ。
責任取るって。
いや、正確には他人に言われたんだが。
でも、それっていつものあのやりとりがあるからだろう?
全責任は自分が取る⇒いや、そんなひとりだけに責任を負わせるわけには⇒決めたんだ……もう、俺……決めたんだ⇒新谷さん……グスッ(涙)
これぐらいの感動の応酬は最低限必要なんじゃないだろうか。
なぁ、スタッフ。
聞いているのかクソスタッフ。
「さ、さぁ……ごめんなさいね。生放送特有のフリーズ状態が続いてました」
「はい!」
「どうした柿谷?」
「しっかりしてください!」
「……お前にだけは言われたくない」
いや、むしろお前はシュンとしておけ。
「はい!」
「おっ、オダママ。どうした?」
「しっかりしてください!」
「前言を撤回する……お前らにだけは言われたくない」
毎回お前らフリーズ状態だっただろうが。
「お題に戻るぞ。無人島だぞ無人島? 電気もガスもない家もトイレもない。お前たち、もっていくもの! も・っ・て・い・く・も・の!」
なんかあるだろう。
「はい!」
「おっ、本田。あるか?」
「充電器はありますか?」
「ないよ!」
当たり前だろ。
「犬小屋は?」
「ない!」
「犬はいますか?」
「いない!」
「鳩は?」
「いないって言ってんだろ!」
「ダウト!」
そう言って俺に指をバシッとさす。
「な、なんだよ」
「ええっ……あなたは今嘘をつきましたね……」
ふ……古畑任三郎のモノマネ……似てない。
「えーっ……あなたは確かに無人島と言いました。確かに人はいない。それは、設定として認めましょう。だがしかし、トイレも家もない……その設定は最初聞いてません。そんな無人島はいくらでもある。例えば……バイオハザード化した無人島」
「……ねぇよ」
そんな無人島はもはやサバイバルだろ。
「犬小屋も犬も携帯も鳩もいる無人島だった! そうですよね!?」
「違う」
「なんでですか!?」
「俺がないと言ったらないんだ座れバカっ!」
「……ひ、ひどい」
「いいか、俺がルールだ。俺がないと言えばない。あると言えばある。この無人島は犬小屋も充電器もない。鳩も犬もいない。ましてや、かつて人が住んでいたけど、全員がゾンビ化して誰ひとり人がいなくなったというバイオハザードのキチガイ設定でもない」
「じゃあなにがあるんですか!?」
「テメーで考えろバカ!」
木とか魚とか獣とかだいたいそういうものだよ。
シュン。
「本田ちゃん、元気だして」「あの人の設定の作り込みがダメなのにねー」「横暴だよねー」「パワーないのにパワハラするなんて」「さすがはパワーナイナラさん」「パワーナイハラさん」「パワーナイハラさん」
……パワーナイハラさんやめろ。
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