第51話 収録(6)
「はい、ということでね。彼女たちは頑張ってくれているんですが、番組の時間などを考慮して、この時間に別の競技に移りたいと思います」
鉄棒でぶら下がっている彼女たちを尻目にMCを続ける俺と古谷。もしかしたら、この番組中に決着がつかないのではないかという非常に恐ろしい考えもよぎったが、そこはここのスタッフに任せることにした。
「まだまだ余裕です!」「24時間休みなしでいけます」
もはや、映っていないのをつゆ知らず、バチバチとやり合っている間と連城。今後、番組までにどちらかが負けてくれることを願うばかりだ。それは一重に彼らスタッフたちの手腕にかかっている。
ここに、絶対に負けてもらわないといけない戦いが開幕された。
昨今はヤラセに対する判定も視聴者が厳しいので、かなり難しいと思うが、まあやってくれるだろう。
「さあ、次の対決に行きたいと思っていますが……ええっと、ここでポイントですか? ええっと……プラスポイント……凪坂46は10520点、TYO49は6380点」
「……お前は、マイナス8万5千点だけどな」
「古谷、うるさい」
もう、ポイントはむしろどうだっていいよ。
そんな時、スタッフから信じられないカンペが。
『この対決がラストです』
「TYO49の名に賭けて絶対に負けません!」「私だって凪坂46を背負ってるんです!」
・・・
こいつらの落とし前、どうやってつけるんだよ。
しかし、無情にも生放送。
「最終対決は全員リレー対決ー!」
パチパチパチ。
「ええっと、これはトラック一周200メートルを全員でリレーしてもらいます。最終的に勝った方には10万点が加算されます。現在のポイントは、10520点、TYO49は6380点、これに一回戦の勝者に1万点がTYO49に加算されてTYO49が一歩リードしております」
「新谷……お前のマイナス8万ポイントを無かったことにするな」
「ぐっ……どっちにしろ、この勝負に勝った方が勝者となります」
なんせバラエティの定番だから。
結局、最後に勝った方が、勝者だから。
「はい!」
「なんだ、柿谷」
「3POはどうなるんですか!?」
「連城な!」
浸透されていないアダ名で呼ぶな!
「いや、間と連城は……あの勝負が終わるまで参加できないので、今回は例外ということで」
「そ、そんなのあんまりじゃないですか!?」
「スタッフに言え!」
「彼女もメンバーです。凪坂46のメンバーです!」
「スタッフに言え!」
「TYO49だってそうです。間ちゃんだって、きっとメンバーたちと走りたいって思ってるはずです!」
「スタッフに言え!」
構成もなんもかんも俺が決めてるわけじゃねーんだよ。
「くっ……なんという権力」
「ああ、貴様は途方もないアホだったなさっさとアンカーのところに行けアホセンター!」
ほぼ強制的に、というか確実に強制的に柿谷を規定の位置に立たせる。
「……はは、お前んとこのセンター面白いな」
「古谷……お前と変わってやりたいよ」
「……」
「さあ、最終対決です。よーい、ドン!」
そうピストルを鳴らすと、両チームとも全力で走る。
「……新谷。俺はさ、お前と解散して、もうこうやって話せないって思ってた」
「な、なんだよ急に」
「もしかしたら……あの子たちは……俺たちの関係性を知って……敢えてあんな感じを演じたんじゃないのか?」
「それは……激しく気のせいだと思うぞ」
絶対。
きっと。
……多分。
結局、リレーはボロ負けで、連城は12時間後に勝った。
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