第22話 楽屋隠し撮り後
一応ネタバラシということで、スタッフが彼女たちに真実を告げて収録現場へと誘う。戸惑いながら、入ってくるメンバーたち。
「さあ、俺たちは君たちの行動を隠し撮りしていたわけだけど……」
「「「……」」」
……キャーとか、イヤーとか、言えよ。
「どんな気持ち? ねえ、君たち。どんな気持ち?」
「……気持ち悪いです」
「……」
おい、柿谷(うんばば娘)よ。
こっちだって、仕事だよ。そんな冷たい目で、見るんじゃねぇよ。
「しかし、君たちは普段から俺のことを大二郎って呼んでるんだね。ふーん……」
これ見よがしに、不機嫌ムードを演出する。
……ここで、メンバーたちがアウアウしてくれれば、なにかが生まれるかもしれない。
「あの……」
海原林檎(詐欺師)がおずおずと手をあげる。
「どうした?」
「大二郎……ですよね?」
「……っ! そうだけど!」
普通、『さん』づけだろう。ましてや、名前呼び捨てって。
「……実は、苗字ってなれないんですよね」
「なんで?」
「欧米だと、ミドルネームじゃないですか?」
「えっ、もしかして海原って外国出身?」
「はい。ブラジルで生まれて、10歳まで過ごしました」
「あの……私も」
同じく大二郎呼ばわりしていた杉田玄白(姫花)も、手を挙げる。
「お前もか」
「はい……イギリスで10年……」
そ、そうか。
それは、リサーチ不足だった。急いで……プロフィール欄をかくに――
「お前ら山梨と熱海出身じゃねーかーーーー!?」
「「……」」
だ、黙るんじゃねぇよ。嘘はダメだろう、いくらなんでも嘘は!?
「で! 本田は? 俺のことを大チョフ呼ばわりしてたけど」
まさか、ロシア出身とか言わないよな?
「実は……ロシア――「言わせねぇよ!?」
お前の出身、香川県じゃねーか。
「……大っちょが、よかったですか?」
「そう言う問題じゃないんだけどな!」
ただ、新谷さんと呼べばいいだけなんだけど!?
「はい」
能條(根野菜)が元気よく手を挙げる。
「どうした?」
「安西先生のとこの下り、オンエアされますか?」
「しねえよ!」
アレは、世界で一番無駄な時間だったんだよ!
「……はい」
「おっ……どうした、石川?」
「あの……実は、私……」
震えている……なぜか、青ざめた表情で震えている石川(マーマレード娘)。
「うん?」
「ごめんなさい! 姫花のカレンダーの……9月と10月を変えたの……私なんです!」
・・・
いや、万引き犯のテンション!
「い、いや別にそんな大したことじゃ――」
と、言うよりあの部分絶対にカットされるだろうから。その話、ちょいちょい入れられると編集しにくくなるから。
「私……私……大変なことを……取り返しのつかないことを……つい、魔が差して」
・・・
いや、子ども取り違えた時のテンション!
「本当に全然気にしなくていいんだって! ほら、杉田(姫花)! お前もなんか言ってやれ! 全然問題ないよな!?」
「……よくも……私の大切な……かけがえのない大切なものに!」
・・・
いや、愛する人が傷つけられた時のテンション!
結局、全部、オンエアされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます