第21話 楽屋隠し撮り


 ここで、一旦カメラが止まってディレクターが前に出てきた。


「……はい。ここで一旦切りまーす。彼女たちが戻ってくる映像が2週目分の放送になりまーす」


「……」



 ……ここのスタッフは確実に頭おかしいな。こんなクソ内容で2週分行こうという決断たるや。


 しかし、それは運営やここのスタッフや梨元さんが決めることで、俺は与えられた役目を遂行するのみ。


「さあ、今週も、楽屋隠し撮りということでね……早速見ていきたいと思いますけども」


 おっ……アイツらが戻ってきた。


「アッアッアッ、アイラーヴーユー♪ が、止まらーない」


 鼻唄を交えながら小刻みにステップを刻みながら、柿谷芽衣(うんばば娘)がご機嫌そうに座っている。普段あまり笑顔はないが、こういう時は凄く絵になる美少女だ。


「おっ……可愛いねーー」


「アッアッアッ、アイラーヴーユー♪ が、止まらーない、止まらーない……マラドーナ!マラドーナ!」


         ・・・


 いきなりなにーーーーーーーーー!?


 き、危険すぎるだろコイツ……いきなり奇声発するより怖いわ!


「うっ、うっ、うっ……コッチはフィーゴ、アッチはジーコ。では、コッチは?」


 こ、棍野菜大好き能條真尋がマラドーナに呼応して、


「「「ベッケンバウアー! ベッケンバウアー!」」」


 合唱が始まる。


 ……いや、ガチ過ぎるだろ! マネージャも、せめて、少しぐらい行儀よく言い含めろよ。こんな危ないグループ、ファンつかねーよ。


「ねえ、それより。新谷さんのことどう思う?」


 そんな話題を振ったのは、守護神川島。


 こ、これは……なにかが起きる予感。


 仮に俺が褒められる→「へー、お前たち実は俺のこと、好きだったんだ」→「やだぁ、新谷さん。聞いてたの?恥ずかしい」→照れた彼女たちを映せて視聴率UP


 仮に俺が貶される→「お前たちは、俺のことをそう思ってたんだな」→「そ、そんな新谷さん誤解ですよ」→「なにが誤解なんだ。もう、いいわかった」→シュンと落ち込んだ可愛い姿を映せて視聴率UP


 ……どっちパターンでも、いけるな。芸人としては、後者の方が美味しいけど、奴らには多くを望むまい。


 よし、こい!


「大二郎か……ねえ、どう思う?」


 林檎(詐欺師)が隣にふる。


「うーん……大二郎でしょ……うーん……どう?」


 エース本田にバトンタッチ。


「……うーむ……大二郎……姫花、どう思う?」


 ……コイツら……俺のこと大二郎呼ばわりしてんのか。


「大チョフかぁ……」


 大チョフ!?


「大っちょね……」


 能條(根野菜)……あいつら、俺のことナメきってやがるな。


「いや、大っちょってなによ。大チョフでしょ?」


 杉田玄白(姫花)……どうでもいいだろう。そんなことより、俺が好きか嫌いか。どっちなんだ……


 どっ・ち・な・ん・だ!?


「なに言ってんの? 大チョフって……あの顔はどう考えても大っちょでしょ!」「あの顔はむしろ大チョフでしょ」「いや、逆に大っちょだって」「いやいや、逆だったら大チョフでしょ」「あっ、間違えた逆の逆だ」「大チョフだって……これだけは絶対に譲れない」「大っちょったら大っちょ!私だって、断固大っちょなんだから! 断固たる決意なんだから!」「あ、安西先生はずるいでしょ!? なら、私は三井寿!」「ミッチー取るの!? じゃ、私はリョーチン」「あんたは河田(兄)でしょ」「い、いやよ。そっちにあげるわよ河田(兄)」「いらないいらない! 河田(兄)はあんた!」「絶対にいらない! 河田(兄)じゃんけんしよ!?」「……じゃんけんなら……わかった!」
















 ……全然違う話になってるよチクショウ。

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