怪盗紳士ミック退場(2)
「さて……そろそろ本題に移ろう。君は
「張形技師の黒馬氏ですね。もちろん知っていますよ」
「君にはかの名工の作――
「……詳しく聞かせてもらえませんか?」
「私には別居中の妻がいる。性格の不一致というやつでね。私としては彼女のためにも早くお互い別々の人生を歩むのが最良の選択肢だと思っているんだが、なかなか理解が得られず苦労しているところなんだが……どうもその妻が最近浮気をしているらしいのだ」
「浮気、ですか。相手はわかっているんですか?」
「いや。君に声を掛ける前に探偵を雇って調べさせたが、身元を掴むことはできなかった。ただ、銀行振込の記録から妻が突模茄子を購入した事実だけは突き止めたんだ」
「あなたは突模茄子の製作に関わっていない、と」
「ああ。だから盗み出せば間違いなく浮気の証拠物件となる」
黒馬意武氏の突模茄子は、発注者の相手を務める男性の陰部を模して作られることで知られる逸物である。狩鷹に覚えがないなら、必然的に狩鷹の妻は別の男のモノをモデルにして突模茄子を作らせたことになる。
「良いでしょう。料金は二百万円と必要経費です」
狩鷹は一瞬伊良間と目線を合わせてから再びミックの方に向き直った。
「いつまでにできるかね?」
「まず、一週間」
「ふむ。三日でやれるなら、もう五十万出そう」
狩鷹の態度に妙な雰囲気を感じ取ったミックだったが、彼はあまり深いことを気にしない性格だったので、すぐに忘れることにして院長夫人の住まいについて確認を始めた。
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