希望

後ろに向かって進んでいた足が止まった。


「ペットのほn・・・。」


「それ以上言ったら、焼き殺すぞ!

富士ノ晴樹イ!」


 ちゃんと名前覚えててくれたんだ。


 ほのちゃんは、口から赤い炎を出しながら、目が赤く染めてこちらをにらんでいた。

 僕の中での恐怖が一気に消えた。

そして、笑顔に変わった。


「ごめんなさい。

でも流石にその名前は笑えちゃうよ。」


「可愛い…。」


 僕は女の子の方を見ると、女の子は目を輝かせながら感動していた。


 まさか、こいつほのちゃんって名前を気に入っているのか!?

 可愛い子犬とかに付けるのではなく、こんな狂暴きょうぼうな龍に付ける名前じゃないのに。


「そうだろ!

そうだろ!

この名前は私の宝物じゃ!」


「ほのちゃ…。」


「殺す!」


「まてまてって!」


 僕が龍に殺されそうになっていると、どこからか虹色の光が射し込んできた。

 僕達はその方向を見ると、先程の扉から出ていた光だった。


「なんだと…!?」


「めちゃくちゃ綺麗きれいだなー。」


「うん。」


 僕達が笑顔に対して、龍は驚愕きょうがくしながら扉から一歩二歩下がっていた。


「…ってか!

扉が光るってことはお前も異世界人かよ!?」


「え!?

そうなの!?」


 僕達が驚きあっていると、扉の光が消えていった。


「ふぁ!?」


 気を失っていたのか、龍がビックリした時のようにビクッと動いた。


 その次の瞬間、龍は僕達の方を向いて日本でいう土下座のポーズをとった。


「!?」×2


 僕達は龍の急な変化に驚きを隠せなかった。


「何があったのか分からないけど頭をあげなよ。」


貴様きさまだまっておれ!

そして頭を下げろ!

そこにオハセマスお方は、第1位階のセレーナ・オブ・キング様だ!」


「セレーナ・おb?」


 僕は横文字の名前は覚えるのが得意ではなかった為、復唱ふくしょうすら出来なかった。


「第一位階が偉いってことは、僕は何階位なの?」


 僕はしれってと聞いた。


「貴様は底辺の底辺、第12位階だ!

セレーナ・オブ・キング様と比べると、天上と海底の差だ!

悪いことは言わん、今すぐ頭を下げてこれまでの無礼ぶれいを謝っておけ。

運が良ければ、魂だけは救ってもらえるぞ。」


 僕は状況が全く理解出来なかったが、とりあえず土下座ポーズをとった。


「すみませんでした。」


「・・・。」


 数秒間の沈黙ちんもくが続いたので、チラッと上を見るとセレーナ・おbが目を白くして固まっていた。


 僕はこっそり近づいて肩をそっと叩いた。


「ふぁ!?」


 目を覚ましたのを確認して、僕は超高速で土下座の構えをした。


「あわわ!

頭上げてよ!

私そんなに偉いの子じゃないよー。」


「何をおっしゃります!

貴方様はセレーナ・オブ・キング様なのですから、この世界で2番目に偉いお方ですぞ!

私めも、龍の身でありながら神王様より第3位階を頂きましたが、それだとしても第1位階と第3位階とでは大きな差が御座ございます…。」


 炎の龍は、そのまま頭を下げていた。


 沈黙ちんもくの中、らちかないと思った僕は立ち上がった。

 もし本当にこの世界で2番目に偉いのなら、記憶を取り戻せたらこの世界から現実世界に帰れるかもしれない。


 僕は一か八かに出た。


「この世界の中でも一番偉い王女様なんだね。

 知らなかったよ。

 今まで無礼なことしてごめんなさい。」


 僕が立った状態で頭を下げて謝ると、慌てながら首と手を左右に振っていた。


「一つ提案があるんだけどいい?」

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