最初の扉

「今からどこ行くの??」


「んー・・・、どこ行こっかー?

 行きたいとこある?

 ってわかんないよな、あはは・・・。」


「あっちに行きたい!」


 女の子が指さした方を見ると、薄暗うすぐら奇妙きみょうな森が見えた。


 僕はやめようと言ったが、「呼ばれてる」と一言いい、そこから女の子は聞き耳を立てずに、僕を置いてその森の方へと走って行ってしまった。


 僕は正直暗いのが苦手だ。

 だから行きたくない、でも女の子一人にはさせられないと思った。


 僕は女の子を追いかけるように深い深い森へと入っていった。


「おーい!」


 ・・・。


完全に見失ってしまった。

音はなく、視界も暗くて悪い。

何かに呼ばれてるとか言ってたような気がするが、幽霊じゃないかと思うと更に怖くなってきた。


「きゃー!!」


この声は女の子の声だ。

何かあったんだと思って、全力で声のする方へと走った。


「なんだこれ・・・。」


 声の辺りに着くと、目の前には白く、とても大きな神聖そうな扉があった。

 それはとても美しく、芸術に興味が全く無い僕でさえも引き込まれてしまう建造物だった。


 数秒後我に返って前を見ると、女の子が扉の方まで近づいているのに気がついた。


・・・。

僕は一瞬女の子の名前を言って止めようと思ったが、まだ知らないことに気が付き、声を初声無かった。


「危ないよ!

近づかない方がいいよ!」


 僕は名前を呼ばずに、言いたいことだけを伝えようと必死になって叫んだ。

 明らかにこの扉がこの世の物とは思えないのもそうだが、扉の前にはとても大きな炎を帯びた龍が立っていたからだ。

絶対に危険だ。

 

 しかし、僕の思いとは裏腹に、女の子はお構いなしに扉へと近づいていった。

 僕は怖い思いにとらわれながらも、必死に女の子の元に走った。


「止まれ!!」


 炎の龍は扉に向かってくる僕達に対して力強く声を発した。

 それは例えたくても例えることが出来ない程の爆音と威圧いあつだった。


「名は何とマヲス?」


 怖い、怖い、怖い。

 僕は下を向いた。

 足は震え、心臓は落ち着きを忘れて破裂はれつする勢いで鼓動こどうをしていた。


「そこのお前!

そこのガキ!

名を何とマヲス?」


 僕は顔を上にあげて、怖いながらも龍の目を見ながら自分の名前を言った。


「富士・・晴樹で・す。」


「富士ノ晴樹イだな。

間違いないな?」


 僕は、はい!と言いたかったが、声が出なかった為、必死に頭を上下に繰り返して名前が合っていることを伝えた。


 すると、突然炎の龍が扉の方を向いて大きな咆哮ほうこうをした。


 耳をふさいでも耳以外のありとあらゆる穴から音が入ってきて、頭が振動しんどうでカチ割れるかと思った。


「・・・、収まった・・・。」


 炎の龍を見た後に扉の方を見ると、特にこれといった何も変化は無かった。


「ほほう、お主はこの世界の者ではないな。

 いわゆる冒険者という扱いで存在している、この世界の遺物いぶつだな。

 お主にこの扉を通る資格はない。

 今すぐ立ち去れ!」


 僕は炎の龍の威圧いあつ圧倒あっとうされ、一歩、また一歩後ろに足が動いていた。


 炎の龍はその反応を見て、目線を僕から女の子の方に向けた。


「そこの娘!

 名を何とマヲス?」


「・・・。」


 そういえば、こんだけの間ずっと一緒にいたけど名前を聞きそびれていたな。

 どんな名前なんだろう?


「分からない、分からないの。

 思い出そうとしても何も・・・。」


女の子は、首を振りながら不安げな顔で言った。


「ふっふっふ。

 うそを付いているのか、本当に記憶喪失きおくそうしつなのかは分からないが今は関係ないことだ。

 この世界にいる限り、この扉の前では秘密は出来ない。

 分からないなら教えてやろう!

 ゲムゲイド・ラスト!」


 炎の竜が扉の方を向いて呪文をえると、扉に文字と色鮮いろあざやかな丸い光が円を描いて現れた。


「何だあれは!?」


「これは、この娘の全てだ。

 この扉の前では嘘をつくことは出来ない。

 私は神王様しんおうさまより、この呪文を唱えることを許された。

 炎龍王えんりゅうおうバースト・エンドだ。

 またの名をペットのほのちゃんだ!」


「・・・え?」

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