絶望

 それから数日後・・・。


僕達は僕達なりに、近くの町の復興ふっこうを手伝っていた。

 その間女の子はというと、うなずく程度で一言も声を発せずにいた。

 でもどこかに行くでもなく、ずっと僕の近くにいた。

 そして明くる日、現実世界の人が天使のおげで決戦場に集められた。


 「お久しぶりです。」


 空を見ると、天使が神々こうごうしくしながら、ゆっくりと降りてきた。


 「皆さん長い間本当にありがとうございました。

  私の身勝手な呼b・・・。」


 全員が天使のお言葉を聞いている間、僕達二人は最後の復興物資ふっこうぶっしを運んでいた。

 参列さんれつしていた現実世界の人間は話した限りだと、下は13歳~上は70歳位までの人がいた。

 それぞれ違った武器・防具を装備していて、どの人も戦士の目をしていた。


 「・・・、それではそろそろ本題に入ります。

  さっしがついているとは思いますが、魔王がいなくなった今、冒険はここで終了となります。

  上の方の承認しょうにんで、現実世界の皆さんは元の世界に戻れることになりました。

  改めて、50年間ありがとうございました。

  本当に感謝してもしきれない程です。

  ・・・、それでは呪文じゅもん演唱えんしょうします。

  メリック・トリート・ファイン!」


 天使の呪文により、現実世界の人間の体が光りだした。

 たった数日間の異世界生活だったけど、ここでの復興の際に仲良くなった異世界人も沢山いた。

 そんな人達とももう会えないと思うと、急に悲しくなった。

 僕はいつも流さない涙を流しながら精一杯せいいっぱい手を振った。


 さよならって、こんなに悲しいんだな。


 「・・・、あれ?」


 他の現実世界の冒険者が光に包まれて現実世界に続々と帰っているのに対し、僕の体には同じ光が宿やどらなかった。


 ・・・そして、全員帰ってしまった。


 「天使様!

  僕も現実世界の住民なんですけど!?。」


 泣いている天使に対し、僕は自分の感情が抑えきれなかった。


 「君は確か、一番最後にこっちに来た子だよね!

  手違いで呪文がかからなかったのかも!

  ちょっともう一回やってみるね。」


 何か急に性格変わったような・・・。

 まっいいか!


 「メリック・トリート・ファイン!」


 「・・・、光らない。

  天使様!他に方法はないんですか?」


 「んー、ない!」


 天使はサラッと言った。


 「ないってちょっと・・・、これから僕はどうすればいいんですか?」


 「んー、まあまた調べとくよ!

  まあいいじゃん!

  異世界だよ異世界!

  幸いにも魔王もいなくなったし、ちょっとの間だけでも観光気分で楽しみなよ!

  それじゃあ、あたし次の仕事あるから!

  また連絡れんらくするね~。

  ばいばいー!」


 天使はそう言うと、笑顔で手を振って消えていった。


先程までの光景こうけいが無かったかのように、周りは静けさでたされていた。

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