第28話 クリスマス事件(2)

 朝まで降っていた雪は家を出るまでにやんだ。マスクを着けた千里は新雪を踏み固めながら大きな道を避けて予備校に向かう。周囲を警戒する千里が恐れるは知人との接触である。特に紗花や小夜と顔を合わせるわけにはいかなかった。


 予備校に到着した千里は教室に入ってようやくマスクを外す。予備校の知人は美波しかいない。その美波も別の教室での受験だった。


 美波の策略にはまった千里はクリスマスイブに試験を受けに来た。ただ、そのことはまだ問題ではない。悩みの種は美波がそばにいるということだった。


 クリスマスは誰とも過ごさない。そのための約束が茜や紗花とは交わされ、美波ともそうなるはずだった。しかし、結果は今の有様となっている。


 模試が終われば美波にどこかへ連れ出されるに決まっている。そんなことをして知り合いに遭遇した場合、言い逃れは不可能である。今日とはそれほど特別な日なのだ。


 ただ、幸いなことに模試後の予定についてはまだ話し合っていない。申し訳ないものの、会わないように黙って帰るしかなかった。


 試験が始まってからも千里の精神状態は乱れていた。それにもかかわらず、模試の手ごたえは予想以上に良かった。それに免じて見逃してほしいと感じるが、美波には関係のない話である。


 最後の化学はかなり出来が良く、千里は気分を上げることに成功する。しかし、試験官が答案用紙の回収に手こずったことで再び嫌な雰囲気が支配的となる。美波の教室はすでに解散しているかもしれない。そうなれば黙って帰ることができなくなる。


 解散の合図と同時にいつもは使わない出口から教室を出る。この日は正面階段ではなく、フロア端の非常階段を使うことにしたのだ。これで美波との接触は極限まで下げることができる。


 心の中で何度も謝罪しながら、少数の生徒と一緒に階段を降りる。美波には用事があったと後から連絡するつもりだった。


 しかし、階段前に立つ美波を見つけてその必要はなくなった。


 「やっぱりこっちから降りてきた。遅かったね」


 「……そうかな」


 千里の心臓はこれまでにないほど高鳴る。美波の顔を直視できなかった。


 「何も言わないで出ていこうとしたでしょ?私には分かるんだから」


 「…………」


 どうしてと聞きたいが、今は美波が怖くて話ができない。千里の考えを何もかも見破っていたのだ。


 「どうして分かったのって顔してる。……簡単に分かるよ。だって、千里が積極的だったのって告白の時だけで、それから誘うのはほとんど私だったでしょ?それに、私が模試を勧めた理由に気付いたはずなのに何も言ってこないから、恥ずかしがってるんだろうなって。もしくは嫌がってたり?」


 「半分ずつだよ」


 美波が考えを暴露して、千里もようやく反応する。動揺は隠せないが、千里には説明の義務がある。美波が怒っていないことも疑問として残っていた。


 「半分って恥ずかしさと嫌がったってことが?」


 「そうだよ。気付いてると思うけど、僕はあまり積極的じゃない。恥ずかしいし、慣れてないから」


 「だから私から誘ったんだけど?」


 「誘った?これが?」


 千里はやや口調をきつくする。これは演技であるが、美波は目を丸くした。


 「僕から言い出せなかったことは謝るよ。だけど、美波だって同じだ。それどころか、騙すように僕に模試を受けさせた分だけ質が悪い気がする。違う?」


 千里は美波のやり方を追及する。ただ、美波に悪意がないことは明白であり、よほど千里の方が悪質だった。


 「ごめんなさい。騙すなんてそんな……」


 美波は誤解を解こうとたじろぐ。千里はこのまま喧嘩別れに持ち込もうと試みた。怒った方は後で怒りを鎮めればすぐに仲直りができる。関係が千里の思い通りに操作できるのだ。


 「今日は……」


 頭を冷やすためという名目で千里は解散を告げようとする。しかし、言い切る前に美波が千里の腕に抱きついた。


 「ごめんなさい!私ってば自分のことで頭がいっぱいで。だから仲直りも兼ねてやっぱり一緒に出掛けよう?」


 美波はめげることなく千里に迫り、公衆の面前で密着してくる。他人の視線を気にする千里は慌てた。


 「ちょっと……美波!」


 「映画のチケットも買ってあるの。二人で見よ?」


 美波は攻勢に転じたかと思えば、千里を圧倒してその場の雰囲気を完全に支配する。千里に抗う力は残っていなかった。


 「……映画見るだけでいい?」


 「ご飯も行くに決まってる」


 いつの間にか千里の方が要求を聞く立場になってしまっている。怒った演技をしていたはずの千里は、もはやそれを貫き通すことができなかった。


 「……分かったから。いきなり抱きついたり手を握ったりしないって約束できるなら一緒に行こう」


 「うん、約束する!」


 頷いた美波は早速約束を無視し、千里の手を引いて玄関に向かう。千里は仕方なく美波の隣を歩き、その代わりに手を離してもらった。美波は笑顔で何かの映画の前売り券をひらひらと振っている。


 千里が観念したのは、怒った演技ができなくなったからでもある。しかし、一番の理由は健気な美波を見て心が締め付けられたからだった。


 二人で向かったのは、駅に隣接するショッピングモールにある映画館だった。買った時期や値段を聞いてみても美波は何も教えてくれない。映画が純愛作品だと伝えられたときは逃げ出したくなった。それでも美波は逃がしてくれない。


 周囲はカップルばかりで、千里はその雰囲気に苦しめられる。しかし、隣を歩く美波がそんな気分を和らげてくれる。二人は正真正銘のカップルなのだ。


 「千里は何がいい?」


 「これは僕が払うよ」


 二人は甘い香りのするカウンター前で立ち止まる。映画代を出したいと言っても、美波は聞く耳を持たなかった。そのため、代わりとして千里は提案していた。


 「千里はどれにするの?」


 「僕は無難に塩かな」


 「じゃあ私はキャラメルにする。ドリンクは?」


 先に決めさせてくる美波の思惑は簡単に分かる。ただ、千里はそれに付き合う。


 「コーラにする」


 「私はこのキウイアンドグレープフルーツソーダにするね」


 名前の長いドリンクを選んだ美波は、千里の反応を見て笑っている。千里は言われた通りに注文した。


 早めに着席して、よくある広告を横目にポップコーンを口にする。予想通り食べ比べを求めてきた美波は、千里に自分のポップコーンを食べさせてきた。座席はそれなりに後方で、しかしスクリーンが見にくいというわけでもない。


 「甘い後はしょっぱいのがいいよね」


 「そうだね」


 「じゃあ、これもちょっと飲んでみてよ。変な顔してたけど、結構おいしいよ?」


 今日の美波はせわしなく、今度はドリンクの飲み比べを求める。水滴がついたストローに千里は生唾を飲んだ。


 「いいよ。名前からどんな味か想像できるし」


 「そんなのキャラメルも同じでしょ?食べさせられるのはよくて、これは嫌?」


 美波は千里で遊ぶ。千里は毅然とした態度で臨んでいるつもりだったがうまくいかない。すると、美波は一度自分のドリンクを下げて、千里のコーラに目を付けた。


 「これ少しもらってもいい?」


 「味知ってるでしょ」


 「お口直し」


 「……いいけどさ」


 千里が渋々了承した瞬間、美波は何のためらいもなくコーラをストローで飲む。付き合っていれば当然なのかと思ってしまうが、周りに同じことをしているカップルはいない。


 「ここを乗り越えられれば、きっともっと近づけると思うんだけどな」


 千里にコーラを返した美波はそんなことを言い始める。何のことか分からなかったが、美波は続けて説明した。


 「もしかするとイブに会えないのかもってすごく心配だった。だけどどうにかして今二人でこうしてる」


 「あ、ああ……」


 美波は安堵の表情と共に今の状況を楽しむ。美波以外の二人も同じことを思っていたのかもしれない。


 「別に恋人らしいことがしたいわけじゃないし、恋人らしいことがどんなことなのか分からない。だけど、お互いが気持ちを分からないままなんて嫌だし、そんな気持ちにならないで済むなら少しくらい恥ずかしいこともできる。……千里はできないみたいだけど」


 「気持ち悪くない?」


 小学生であれば、間接キスだとからかう場面である。しかし、高校生にもなれば自分の気持ちに意味がついて、相手が何を怖がって何を避けたがるのか分かるようになる。からかわれても不安が紛れるならば意味があると評価できるのだ。


 「気持ち悪く思われたくないのは、格好良くいたいから?」


 「僕なんて全然格好良くないけど、でもそうだよ。少なくとも笑われるようなことは避けたい」


 「じゃあ、こんな些細なことを躊躇う千里には笑っちゃう。付き合ってるのにおかしいよ」


 美波は千里の言葉を引用して攻め立てる。千里が嫌がっている本当の理由は二人の歪な関係にある。千里は良いが、美波は全てを知った後に後悔するはずなのだ。


 しかし、再びドリンクを突き付けてくる美波の目は千里を信じているように見えた。再び拒めば美波が次に何を求めてくるか想像がつかない。千里は覚悟を決めて美波のドリンクを受け取った。


 「案外おいしいじゃん。酸味もそんなに強くないし」


 千里はありきたりな感想を伝える。思っていたほど不思議な感覚ではない。ただ、ドリンクを返したとき、美波の顔は真っ赤に染まっていた。


 「どうかした?」


 「え、いや、なんか恥ずかしくなっちゃって」


 「はい?」


 恥ずかしがることの馬鹿馬鹿しさを伝えていたのは美波である。しかし、今の美波はなぜか赤い顔を誤魔化そうと必死になっている。千里には意味が分からない。


 「あ、もう始まる。静かに見ないとだめだよ」


 千里に追及の意図はなかったが、まっすぐスクリーンに向いた美波はそれ以上顔を見せてくれなくなった。そんな反応をされると千里まで恥ずかしくなってしまう。ただ、ちょうど照明が消されていき、美波に気付かれることはなかった。


 美波からは純愛系の映画だと聞いていた。しかし、実際はホラーに恋愛要素が乗っかっているだけだった。千里が美波の言葉を鵜呑みにしていたことも悪いが、美波の説明は悪意があったと言わざるを得ない。


 ホラーに弱いわけではないが、その映画は声が出るほどの内容だった。驚かされる場面が多数あり、何度も美波に腕を掴まれる。最初は仕方がないと黙認していた千里だったが、エンディング近くになると指まで絡められてしまい、これが目的だったのではないかと疑った。


 しかし、美波の手汗は尋常ではなく、再び照明がついた時には恥ずかしそうに手を離して拭いていた。


 映画館を出た二人は感想を言い合いながら飲食店が並ぶ階まで降りてくる。多くの人で賑わっていたが、用意周到な美波はすでに店を選んでいた。


 「そんなにきょろきょろしてどうしたの?」


 知った顔がいないかと千里が警戒していると、美波が不思議そうに聞いてくる。千里はすぐに言葉を返した。


 「あまり人ごみには慣れていなくて」


 「そうなんだ。多分うるさいような店じゃないと思うけど……大丈夫かな?」


 時折優しくしてくれる美波に千里は少し動揺する。好きになることはないが、好きになってもおかしくはない。


 「大丈夫。嫌なわけじゃないから」


 「そっか。……もうすぐでお店だから」


 美波は少し歩く速度を早くする。千里よりも頼りがいのある姿だった。


 「ここなんだけど。中華料理嫌いじゃない?」


 「大好物だよ」


 千里は適当な返事をして店内を観察する。ただ、店外からでは来客者の姿どころか雰囲気さえ感じ取れない。


 「どうせ千里は何もしてくれないって分かってたからね」


 「次はちゃんと準備するよ」


 「期待してるね」


 次がないことを分かっていながら会話を続ける。来年のクリスマスまでには謎の男との約束が終わるのだ。


 「夜景、とても綺麗」


 通された席は窓側で、下手良の夜景を一望できた。上映中にまた雪が降ったようで、交通量の多い道路も白く染まっていた。


 「今日はありがとう。すごく楽しい」


 「僕もだよ。誘ってくれてありがとう」


 「それでこれ、プレゼントなんだけど」


 注文を終えて料理を待っている間、千里は美波から綺麗に包装された小包を受け取る。千里が受け取って戸惑っていると、美波は言葉を付け足した。


 「私が見返りを求めてると思う?」


 美波はやはり千里の何もかもを把握している。逃げようとしていた千里がお返しを持っているわけがない。


 「開けても?」


 「どうぞ」


 千里はゆっくりと包装を開けていく。出てきたのはネックウォーマーだった。


 「あのね、千里はマフラーよりもそっちの方が似合うと思う」


 ネックレスやリングを渡されたらどうしようかと考えていた千里だったが、美波の実用性を重視した選択に胸をなでおろす。同時に千里という人物をよく理解できていると感じた。


 「あとで美波へのプレゼントを買いに行こう」


 「だから私は……」


 「僕だって美波に似合うプレゼントは思いついてる」


 千里が急かすのは失態を挽回するためではない。千里が最低な行動をとっても、美波は呆れることさえしなかった。ただ、このまま至れり尽くせりでは千里が納得いかなかったのだ。


 「分かった。楽しみにしておくね」


 今日だけで美波を何度笑顔にさせてしまったか数えきれない。千里にとってこの日はトラウマになりそうだった。


 夕食を終えた千里が向かった先は、女性物の洋服屋だった。ただ、洋服を買いに来たのではない。千里が美波に選ぼうとしていたのは手袋だった。


 「この店は高いよ……私別のところ知ってるから」


 中華料理屋でトイレに入った際、千里は適当な店を検索していた。値段まで気にすることができなかったため、目の前には息が止まる程の商品が並んでいる。美波も若干焦っていた。


 しかし、ここで引き下がるほど情けない話はない。一人暮らしをするにあたって、千里はデビットカードを持たされている。問題があるとすれば、千里の生活が困窮する程度だった。


 「美波に似合うものに値段も何もないよ」


 決めてしまったからには貫かなければいけない。千里は堂々と商品を見て回った。


 「……これはどうかな」


 千里はそんなに時間をかけることなく、青とグレーの配色の手袋を美波に着けさせる。どれを試着させても変わらず似合っていたが、人前で冷静な美波にはその色が似合っているような気がしたのだ。


 「すごくいい」


 美波はすぐに問題ない旨を伝えてくる。ただ、絶対的な自信を持てない千里には美波が配慮しているように見えた。


 「本当に?」


 最初の威勢はどこかにいってしまう。すると、美波は手袋をつけた手を見せてきた。


 「千里が選んでくれたんだから」


 美波の笑顔はそばに立つ店員の頬まで緩める。千里の心配はこの瞬間に消えた。


 「ねえ、最後に外の広場に行こう?」


 店を出た美波は早速手袋をつけて千里に提案する。広場とは駅に隣接するように整備されている空間で、夏はビアガーデン、冬はウィンターフェアの会場となっている。この時期は大きなクリスマスツリーが設置されており、カップルに人気のデートスポットだった。


 千里の予想よりも冷え込みが厳しい。しかし、多くのカップルと少しの家族連れがクリスマスツリーの前で記念撮影をしている。美波もそれを所望しているようで、順番を待って写真を撮った。ツリー近くのデジタル時計は九時前を指している。ここらで今日のデートは潮時だった。


 「とても楽しかった。今日は何から何までありがとう」


 「私もだよ。特別じゃなくていいから、たまにはこんなデートしようね」


 「うん、次は僕から連絡するよ」


 「絶対だよ?」


 美波は千里の手を優しく握る。上目遣いの美波は最後に何かを言いたげにしていた。


 「それじゃ帰ろうか」


 美波の視線に気付いた千里は急いで解散を告げる。しかし、そんな千里の胸に美波は飛び込んだ。


 「気付いてるくせに、意地悪」


 「……ごめんね」


 千里は気付いている。しかし、茜との一件があったため、それを必死に避けようとしていた。千里は迫られると拒絶できないのだ。ただ、美波は茜より引き際を明確にしていて、あっさりと千里から離れた。


 「じゃあ、今日はこれだけでいい。本当はずっと一緒にいたいくらいなんだけど」


 「明日は特進化学の日だからまた会えるでしょ?」


 「そうだけど……」


 不満気な声が千里を苦しめる。しかし、美波を満足させてあげることはできない。


 「さあ中に入ろう。美波は地下鉄でしょ?駅まで送るから」


 地下鉄の駅は下手良駅から少し離れていて、そこまでは地下歩道が続いている。弱々しく抵抗する美波を引いて、千里はその入り口に向かった。一時はどうなることかと思っていた千里だが、ここまでくると安心感がこみあげてきた。


 周囲には同じような人がたくさん歩いている。多くは二人組を作っていて、それぞれが楽しそうな時間を過ごしている。だからこそ、気を抜いていた千里でも、前方から近づく一人の姿に違和感を持つことができた。


 その女性は一人で歩いていて、千里が意識した時から二人を見ているようだった。最初は意識のしすぎだと思っていたが、近づくにつれて恐怖心が増してくる。そうして、相手の顔が確認できる距離にまで近づいた。


 小夜に凝視されていることに気付いたとき、千里は何の反応もできなかった。


 異変に気付いてない美波は今日のことを千里に色々と話している。しかし、そんな言葉は一切千里の耳に入ってこなかった。足を動かし続けることで精一杯で、意識は全て小夜に向けられている。小夜も近づいてくることを止めない。


 すれ違う瞬間、小夜は千里を睨んだ。その顔は非難以外のどんな意味も含んでいない。千里は見ていることしかできなかった。


 小夜はそのまま通り過ぎていってしまう。何を考えていたのかは分からない。ただ、振り返って確認することもできない。千里は途端に自分の状況を思い出した。


 「……ねえ、聞いてる?どうしたの?」


 美波の声で千里は我に返る。最後の最後に美波は困った顔をしていた。


 「いや、何でもない。行こう」


 千里は問題ないことを伝えて先を急ぐ。美波を気にしている余裕などない。紗花と千里の関係を知っている小夜に、美波と一緒にいる姿を見られてしまった。それが意味することは難しくなかったのだ。


 美波を駅まで送った後、千里はすぐに携帯を取り出した。画面に映るのは紗花の連絡先である。敵対的な態度を示していた小夜は紗花の親友である。すでにこのことが紗花の耳に入っていてもおかしくはない。


 しかし、千里には電話をかけることができなかった。二股を知られて、一体何を弁明できるのか。千里がどんなに上手く立ち回ったとしても、紗花との関係解消は決定的なのだ。


 また、謎の男の視線も考慮しなければならない。男が千里の失敗を見て何を考えるのか想像もつかないのだ。今の千里ができることは、自らの手でこれ以上状況を悪化させないことだけだった。


 千里が動かずとも、このことを知った紗花は接触してくるはずである。それまでの間、千里には考える時間が与えられる。自分からその時間を捨てるわけにはいかない。


 携帯をポケットにしまった千里は震える手をこすり合わせて帰宅する。やはりこの日に誰かと過ごすべきではなかった。そんな後悔をしてももう遅かった。

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