第27話 クリスマス事件

 十二月に入った途端、寒波の襲来で下手良に雪が積もり始めた。この日は一晩で十センチを超える積雪だったこともあり、いつもより登校に時間がかかってしまう。ただ、千里が慌てながら入ったクラスの集まりは決して良くなかった。


 紗花に話を聞いたところ、この時期にはよく見られる光景とのことだった。千里の遅刻は歩行速度が落ちたことに起因するが、他の生徒は天候に便乗しているだけなのだという。言われてみると、真面目な学生は遅刻していない。


 暖房が完備された教室であっても寒いものは寒い。教壇の先生は汗を流しながら熱弁しているが、千里は降り続く雪を眺めて時間を潰した。おかげで授業内容は全く理解できなかった。


 昼休みになるといつものグループで集まる。千里と紗花が話を展開させて、宏太が時々入り込むように会話に参加する。難しい表情で黙々と食事をする小夜はそんな中で浮いていた。紗花が目配せでお手上げだと伝えてくると、千里も気付かれないように小夜の様子を窺う。ただ、すぐに視線が合って苦笑いで逃げた。宏太も違和感に気付いていたが触れてくることはない。


 千里は、小夜に直接話を持ち掛けてでも原因を特定したいと考えている。紗花でさえ今の小夜を理解できていない。そのもどかしさのあまり、紗花もここ数週間は元気のない生活を送っていた。


 これからは一分一秒の重要性が増して、極端な行動を取れなくなっていく。そう分かっていても踏ん切りをつけられない毎日が続き、千里は小夜の思考に近づけなかった。


 全ての授業が終わると、久しく茜から集合をかけられていた千里は紗花に別れを告げて化学実験室に向かう。受験が近づく茜は多忙な生活を送っていて、化学部の活動頻度は低下している。千里が部室に向かうのは一週間ぶりのことだった。


 「お疲れ様」


 千里が到着したとき、茜は準備室の机に向かって勉強をしていた。白衣の代わりに暖かそうなコートを羽織っている。


 「凄く寒そうだよ」


 茜は制服姿の千里を見て笑う。ただ、薄手の手袋をしながらシャープペンシルを握る茜も同じだった。


 「図書室の方が良いよ。ここと違って暖房がちゃんとしてるから」


 「でも今日は部活の日だから。これは千里が来るまでの暇つぶし」


 茜はそう言って机の荷物を片付ける。千里はその隣に腰掛けた。


 「急に呼んでごめんね。最近会えてなかったから」


 「全然いいよ。連絡してくれてありがとう」


 茜の多忙を気にして、最近は千里から連絡が取れていなかった。千里にとってそれは障害でしかなかったが、茜の将来まで狂わせるわけにはいかない。謎の男から命令されれば事情が変わる可能性は十分あったが、今はそんなことになっていないのだ。


 「千里から連絡してくれたら手放しで喜べたんだけど」


 「……ごめん」


 「ううん、別に気にしてない。でも、気を遣われすぎてる感じがしてて。私は大丈夫だからたくさん連絡してって言ってるのに」


 茜は自分の気持ちをはっきりと言うこともあれば、言わないこともある。そんな奥手な茜からやんわりと連絡を求められていた千里だったが、それを実行に移せてはいなかった。事情は多くあるが、一番は罪悪感が関係している。


 「そうしたいけど、やっぱり気になるから。僕の連絡で茜の気を散漫させるようなことはあっちゃいけないし、受験が終わればいくらでも連絡できる」


 全てを隠す千里は茜を第一に考えているように見せかける。茜は一瞬笑顔になって、慌てて頬を下げようとする。しかし、下がりきることはなく、いつもの雰囲気に落ち着いた。


 「ずるいよ。面倒になったりしてる?」


 「そんなことない。茜に後悔してほしくないだけ。僕は待ってるからさ」


 「……そっか。ありがとう」


 千里の締めの言葉を受けて、結局茜は満面の笑みとなる。先程まで止んでいた雪がまた降り始めていた。


 「じゃあ、次はいつ会える?」


 茜は一時的に千里の考えに納得したが、すぐに今後を気にする。ただ、センター試験まで残り一ヵ月しかない時期に千里から何かを提案することなどできない。目を輝かせる茜を喜ばせる言葉は出てこなかった。


 「もう時間が少ない。センターまではそっちに集中してほしい」


 茜が二人の時間を求めてくれることは千里にとって都合が良い。しかし、これ以上茜を酷い目に遭わせてしまうと、予期せぬ危険を伴う恐れがある。否定を前提とした千里の言葉は他にも多くの情報を含んでいて、当然それを聞いた茜の表情は急変した。


 「え、でも今月は……」


 「分かってる。クリスマスもあるし年末年始もある。だけど……さすがに会いたいなんて言えない」


 「……一日くらい大丈夫って言っても?」


 「茜なら分かってくれるはず。一日の大切さは一年単位よりも一カ月単位の方が大きい。センターが終わったら二次試験までに時間は作れるよ」


 千里がはっきりとクリスマスに会うことを反対すると、茜は呆けてしまう。千里の建前上の気持ちは理解できたはずである。しかし、茜が黙り込んでしまったため、千里は言葉を付け加えた。


 「……もちろん、それだとやる気が起きないとか、僕を嫌いになるって言うのなら企画はするよ。嫌がることを押し通すなんてできないし」


 千里は妥協してもう一度茜の様子を窺う。千里がこのような提案をしているのは、決して茜を困らせるためではない。千里は他にも二人、同じ日の予定を気にしなければならない人物を抱えている。複雑な事情を避けるために、この日の予定は早いうちに決めておかなければならなかったのだ。


 結論として、千里は三人の誰ともその日を過ごさないと決めていた。誰かを選んでそれが露呈したとき、千里の計画は破綻する。それならば、誰とも会わないで家に籠っていることが賢い選択だったのだ。


 千里はそのことを念頭に話をしていたが、茜の悲しそうな顔を見て妥協を余儀なくされた。ただ、茜は首を小さく横に振る。


 「分かった。千里を困らせたくないから。……でも、一つお願いを聞いて?」


 「…………?」


 茜の納得を引き出すことに成功した千里は心の中で安堵する。しかし、即座に出てきたお願いという言葉に警戒した。このような言い回しをする茜は珍しかったのだ。


 ただ、千里が考察を行う前に茜は動いた。突然椅子から腰を浮かしたかと思えば、千里の膝に乗りこんで抱きしめてくる。千里の心拍数はあっという間に跳ね上がった。


 「始まりは夏のことだよ?なのにもう冬になってる」


 「そ、そうだね」


 千里は腕ごと抱かれて身動き一つとれない。何とかして腕を抜け出させようと試みたが、茜はそれを許さず抱きつく力を強くした。耳元で茜の息遣いが響いて、まともに言葉を紡ぐことさえできなくなる。


 「千里からこうしてくれたことあった?手を繋ぐのも私からだったよね?」


 「えっと……」


 今の茜は千里を誘惑しているかのようである。心を強く持って耐え忍んでいたが、茜の顔が目の前に迫って完全に硬直してしまった。


 「千里からキスしてほしい。そうしてくれたら会えない間も頑張れる。心配させるようなこともしない」


 「………」


 どうするべきか必死に考えるも千里の頭では何も纏まらない。期待でいっぱいの茜の瞳に取り込まれ、見つめ合った状態が続いた。


 「できない?」


 茜の顔は近づいては止まりを繰り返し、千里に良い状況を作り出す。腕はなおも千里を拘束している。


 「こういうこと慣れてなくて……」


 「知ってる。千里が奥手なのはただ経験がないから。でもしてほしい。顔を少し前に近づけるだけでいいから」


 茜の目は本気で、千里はどうしようもなくなる。今まで千里はこのようなことを避けて関係を継続させてきた。それはこの関係が偽りだからである。しかし、今はそれを奥手と捉えられて危機に瀕していた。


 「……口が無理なら頬でもいいよ?」


 茜はそう言うなり左頬を近づけてくる。一段階難易度を落としてさらに迫る茜に対し、千里はそれならばと決心した。すぐに顔を離したつもりだったが、感覚は強く残り続ける。


 「お返し」


 千里が終わると、今度は茜が千里の頬にキスする。しかし、今までの強引さとは裏腹にその時間はほんの一瞬だった。


 「千里の方が長くしてくれた。ありがとう」


 真正面を向いて笑顔を見せる茜に、千里はとうとう呼吸さえままならなくなる。その時になって茜は千里を解放するも、代わりに両手で千里の顔を挟んだ。


 「真っ赤になってる。それに熱い。いつもは冷静な千里だけど、本当に慣れてないんだ」


 「……茜だって真っ赤だ」


 抵抗して言い返すもその声は震える。千里は自分を情けなく感じた。


 「私も初めてだから。でも、千里で良かった」


 魅力的すぎる茜に千里はどうすることもできない。このままさらに何かを求められれば言いなりになっていたはずだったが、茜はここで引き下がった。


 「じゃあ、千里の言う通り頑張る。センターが終わったら絶対に時間作ってね?」


 「もちろん。僕から茜との時間を抜くと何もないんだ」


 「そっか」


 最後の茜は笑顔だった。茜は基本的に受動的だと評価していたため、この結果はその予想を覆すものだった。避ける方法があったのか考えてみても、もはや過ぎてしまった時間を修正することはできない。


 現時点では優しく見える千里の行動は、茜をより深く傷つけることに直結している。千里は茜の顔を見て複雑な気持ちになった。


 久しぶりの部活動ではあったものの、約束以外には何もすることはなかった。白衣に袖を通すことさえせず、気温が落ち込んできた夕方に帰路につく。茜は学校に残って勉強を続けた。


 千里は今日のことをよく考えながら雪道を歩いた。そして、頬ではあるもののキスしてしまったことを後悔した。軽率な行動は自分の首を絞めるだけである。あの一瞬だけでも千里の心は大きく揺れてしまったのだ。


 ただ、今の千里は冷静さを取り戻していて、何が最も重要なのか思い出している。頭のおかしい謎の男から栞奈を守っている間は、考えを鈍らせるわけにはいかないのだ。


 今日は予備校の日ではなく、冷たい空気から逃げるために最短ルートで家を目指す。ただ、その途中で見覚えのある後ろ姿を見つけた。


 紗花が幹線道路沿いのスーパーから袋を提げて出てきた。道なりに歩き始めた紗花に千里は後ろから声をかけた。


 「買い物の帰り?」


 「あれ、北山君?部活はどうしたの?」


 今日は部活を理由に一緒に帰ることができなかった。千里の帰宅がやや早いと感じたらしい。


 「今日はちょっとした話し合いだけだったよ。先輩はもうすぐセンターだから、用事が終わってすぐに解散したところ」


 千里が説明すると、紗花は疑うことなく納得する。千里の嘘が上達している証左だった。


 「たくさん買ったんだね」


 「そうなの。お母さんに頼まれちゃって。ヨウ君が熱を出しちゃったから」


 「それは心配だ」


 ヨウ君とは紗花の弟のことである。最近の激しい気温の変化に耐えられなかったのかもしれなかった。


 「北山君も気を付けてね」


 「紗花もね」


 「うん」


 千里は先月、恋愛関係の要因を探るために紗花との関係を故意に乱した。そんなこともあって、話しながら紗花との距離を探さなければならなかった。紗花の態度はもとに戻っている。しかし、長期的な影響がないと言い切ることはできない。


 「……少し話が変わるんだけど」


 千里が距離感を考えてると、紗花が話しにくそうに話題を切り出す。一瞬身構えた千里だったが、悪い雰囲気ではなかった。


 「クリスマスイブって……用事あったりする?」


 勇気を出した紗花が千里に質問する。千里はそれを聞いてすぐ小刻みに頷いた。紗花とも話さなければならないと分かっていたが、同じことを茜と話したばかりである。連続は千里にとって負担だった。


 「そのことなんだけど、謝らないといけないことがあって」


 「え?」


 千里の返答は意外だったようで、紗花は息を呑んで驚く。ただ、千里の方針が覆ることはない。


 「実は、居候をさせてもらってる叔父さんとの予定があってその日に一緒にいられないんだ。大切な用事で外せそうにない。僕から話そうと思ってたんだけど、ごめん」


 「……そうなんだ」


 紗花は露骨に肩を落とす。以前のしこりがまだ残っていると勘違いしたのかもしれず、千里はすぐに言葉を付け加えた。


 「埋め合わせはちゃんとしたい。予定が空いてるときに一緒に出かけよう」


 「……私と一緒が嫌なわけじゃない?」


 やはり紗花は心配していた。ただ、ここで紗花を不安させても千里に利益はない。誤解は直ちに解かなければならなかった。


 「そんなわけない。できるものなら一緒にいたいよ」


 「私のこと好き?」


 先月の考え方に則れば、今の千里は紗花に対して信頼度が低い状態なのかもしれない。加えて、あのときは示す愛情も低かったと言える。ただ、同じことをすれば同じ反応が返ってくるはずで、それは考察に意味のないデータだった。


 「大好きだよ」


 千里は紗花から視線を逸らすことなく言い切る。当たり前な表現も、状況が異なれば意味合いも異なる。紗花は一息ついて千里を小突いた。


 「もう、自分勝手なんだから。最近の北山君、何考えてるか全然わからないよ」


 「そんなつもりはないんだ。でもそう思わせているのなら……」


 言い訳をつらつら話そうとすると、紗花は千里の口に指を当ててきた。千里は黙るしかなくなる。


 「そんな説明いらない。北山君がそう言うのなら私は信じるだけ。その代わり、約束は守ってね?」


 千里には言葉で人を納得させようとする癖がある。しかし、そんなことをせずとも紗花は千里の言葉を汲み取ってくれた。


 「約束する」


 短い返答でも紗花は満足してくれて、数ヵ月前の千里ならば嘔吐するほど悩んでいたに違いない。しかし、今の千里は約束を取り付けた安心感と、美波にも話をつけなければならないという気持ちに変わっていた。紗花はそれを知る由もない。


 「じゃあ、私はここで。また明日学校でね」


 「うん、また明日」


 手を振って歩いていく紗花の姿は本来千里に与えられるべきものではない。そんなことを考えながら、千里も寒さから逃げるために帰宅を急いだ。


 次の日は快晴の空が広がった。内心落ち着かない状態で登校した千里だったが、紗花の態度は昨日と変わっていない。懸案事項の小夜はいつも通りだったが、それにも慣れつつある。紗花とさえ順調であればそれで問題ないと考えるようになっていた。


 今日は予備校に向かう日である。紗花や茜とは上手く折り合いがついたこともあり、美波にも問題なく事情を説明できると千里は考えていた。三人の中で最も論理的なのは美波である。感情に訴えられる恐れが少なく、一番説明しやすい相手のはずだった。


 特進化学では応用問題を扱うようになって、千里はこれまで以上に理解不能な講義時間を過ごしていた。しかし、紗花が毎回力になってくれて、低空飛行ながらもついていくことができた。


 二人きりの時間はほとんどファストフード店で費やされる。この日も美波に誘われた千里は二人で復習をすることになり、千里の理解度はそこで及第点まで押し上げられた。


 「本当に教え甲斐があるなあ」


 勉強を終えた美波は満足げにしている。千里は疲れ切った脳にソフトドリンクで糖分を与えた。


 「美波の説明はすごく分かりやすい。いつも助かる」


 「当たり前でしょ?千里君専属の先生なんだから」


 美波は得意げに笑って千里の頭を撫でてくる。年下のように扱われていることに不満を持つ千里であったが、親密になれた事実を噛みしめるに留めた。


 「そういえば、千里君は次の模試を受けるんだっけ?」


 話を変えた美波はコーヒーを口にする。千里はそれを聞いて、そんな張り紙が掲示されていたことを思い出す。年内最後の模擬試験で、結果は年明けに返ってくる。千里は首を横に振った。


 「模試を受けて分かることなんて点が取れないことだけ。化学はいいとして、その模試に教科がいくつあると思ってるの」


 最も自信のある科目は化学であるが、それ以外は平均以下の学力しかない。そんな千里が模試を受けたところで、不甲斐ない点数が並ぶだけだった。しかし、美波はすぐに反論してくる。


 「でもね、分からないところが分かるってすごい大切なんだよ?」


 「そうはいっても……」


 美波は千里にその模試を受けてほしいようである。人一倍努力している美波だからこそ、千里にもそれを押し付けようとしているのかもしれない。いい迷惑であるが、千里はどうしようかと悩む。


 「締め切りが延びたんだけど、それも明後日だよ?これ、申込用紙予備で持ってるんだけど」


 美波はそう言って自分の鞄からファイルを取り出す。準備の良い美波に千里は苦笑いするしかない。


 「強制はしないけど……一緒に受けてほしいな。そうしたらまた一緒に勉強できるでしょ?」


 「……そうだね」


 千里は相槌を打ちながら美波の本心を探る。心から千里を心配しているようにも、一緒にいる口実を作ろうとしているようにも見える。とはいえ、間違いなく言えることが一つあるとすれば、これ以上美波に面倒を見てもらうわけにはいかないということだった。


 関係を維持するための最低限の時間は必要である。しかし、あくまでも関係を維持できればそれで良く、美波の勉強の時間を奪うことは別の意味で躊躇われた。


 「……千里が変な点数とっても笑ったりしないよ?」


 「美波が僕の勉強を見る必要はないよ。嬉しいけど、少し心苦しい。だったら普通に話してる方が良いでしょ」


 千里は正直に今の気持ちを伝えることにした。ただでさえ美波を弄んでいる千里としては、美波にこれ以上の不利益を被らせたくなかったのだ。しかし、美波はゆっくりと首を横に振った。


 「私と千里は学校が違うでしょ?一緒ならもっとたくさんお互いを知ることができるけど、私はこの短い時間で千里を知るしかない。でも千里は話を誤魔化すこともあれば、何も教えてくれない時もある。何も分からなくて怖くなるのは嫌だから」


 美波の表情はそこまで曇っていない。しかし、唐突に気持ちを打ち明けられて千里は驚いた。美波はいつも明るく、積極的に振る舞ってくれている。ただ、心の中は違っていたのだ。


 「気が利かなくてごめん。僕も色々悩んでることがあったんだ。でも、もうなくなった。……僕もその模試を受けることにしようかな」


 「本当!?やった、ありがとう!」


 美波の気持ちを知って頑なに断ることはできない。美波の献身さには驚かされるが、今はそれを享受するべきだった。美波から用紙を受け取った千里は、指示通りにそれを記入していく。


 申込用紙の提出は次の日に済ませ、次の講義の際にそれを美波に伝える。すると、頬を緩ませた美波が何度も頷いた。


 「その模試、終わるのが夕方なんだって」


 「へー」


 千里は模試の日程とテスト時間が記載されたページを確認する。千里に模試を邪魔するような予定などなく、急かされていたこともあって時間割を見ていなかったのだ。そのとき、千里は違和感を持つ。


 「……この日って」


 「あ、ちょうどクリスマスイブの日だね。一緒に頑張ろう!」


 美波の反応はあまりにも白々しく、その時になって千里はようやく美波の目論みを理解する。千里はまんまと罠にかけられていた。

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