疲れたら休まないとね


「えっと岡村は」


「気絶してるだけだ。それよりもおいっ、お前!! 関口が放り投げたお札を取りに行ってこいッ!」


「ぇ、はあああ、なんでさー。なんで私! なの。普通は、関口じゃない?」


「お前の方が早いだろ」


「え、えぇ。まあ、そうね確かに」



 急にモジモジとしだすマミ先輩。なんだか照れてるみたいだ。やっぱり変わってる人だと思う。





「かわい、ぃ」




 耳元でそう囁いた早苗さんに目を奪われてしまう。


「へ? 早苗さん?」


「って思います? 関口くんも」


 シンプルに寒気がした。やっぱり時々怖くなるような。





「岡村を指導室に連れていく。早苗と関口は先にパソコン室に戻っていろ」


 神宮寺先輩は岡村を軽々と持ち上げると、僕達にそう告げる。指導室で何をするのか、どうして岡村はああなったのか聞きたいことがたくさんあった。



「関口くん……い、行きましょう」


「うん」


 聞くのは後にしよう。



 *****



 早苗さんからどうぞと渡された煎餅を頬張りながら、重要なことを思い出す。


「あっ!! 」


「ひぅ、あの…関口くん?」


「早く治療しないと……早苗さん、怪我が」



 ポタポタと音を立て、腕から滴り落ちるのは早苗さんの血だ。


 最初見た時は穴が空いたように見えたけども、もしかして塞がっている?


 僕が早苗さんの腕を見つめていることに気づいたのか、腕を隠すようにくるりと後ろを向いてしまった。



「大丈夫、です。神宮寺先輩に治し、てもらえるから。それより関口くんは、……に、にんげんですから、その」


「えっ、痣だから、僕こそ平気だから!!」


 石が当たったくらい、平気。そこまで痛くはなかった。岡村の投げる球は速い。すごく速い。でも石ぐらいで、早苗さんの腕に穴が空くのだろうか。


「うーん」



 すごくわからないことだらけだ。考え込んでいる僕の背後でガラガラとドアが開いた。



「あっ! 神宮寺先輩」


「お疲れだ、二人とも。岡村はいつもの対処通りに一週間休ませる。……お前達は授業へ戻れ。あとは俺たちがやる」


「待ってくださいっ。早苗さんが怪我をしているんです。治してあげてください」




「……あぁ、わかった。なら関口、お前はもう授業へ行け。話はつけてある」


「は、はい」





「疲れたか? まあ初めてにしてはよくやったと思うぞ、俺は」


 ドアが閉まりきる瞬間、神宮寺先輩がふわりと微笑んだ気がした。



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