軽い嘘にご注意を

あやかし? ……ん、神宮寺先輩もそうなんですか?」


「ハーフだがな。お前が、お前だけがただの人間なんだ」


「うーーーん、ピンとこないですね。すいません」



 いきなりそんなことを言われてもって感じなんだよな。



「早苗のツノを見なかったのか? あれは十分証拠になるだろう」


「…………うぐ、んっとそうですね」



 記憶の奥底に閉じ込めてしまいたかったんだけど、そうともいかないらしい。確かに早苗さんのおでこ辺りについていた、ツノが。先輩も見えてるんだから幻覚ではない。


 幻覚ではないらしい。



「ずっと気になってたんだ」


「へっ、な、何がですか?」



 いつもより真剣な口調で言われ、ドキッとする。神宮寺先輩の瞳が僕の目を見つめている。



「なんで普通の人間がこの学園にいるのかと」


「し、知らないです。僕は親に、ここにしろと言われただけなので」


「あとお前は勘違いしているぞ。俺たちが所属している部活はパソコン部ではない」


「へっ、どういうことですか?」



 予想外の言葉に僕は、神宮寺先輩をポカンと見つめる。


「正しくは、粛正しゅくせい部だ。……お前がなぜかパソコン部と勘違いしていたみたいだからな」



 粛正――意味 厳しく取り扱って不正をなくすこと、だったような?



「しゅく――!? えっ、でもパソコンで小説書いてるってマミ先輩が言ってましたよ?」


「お前をこの部に入らせようとした嘘だ」


「えっ」



 マミ先輩の印象が変わりそうなんだけど。何それ、怖すぎる。



「それに騙されるお前もお前だがな」



 神宮寺先輩は、ずれたメガネをクイッとあげながらのきつい一言。けっこう心にグサッとくる。神宮寺先輩は、そういうところがよくあるんだ。






 *****





『ずっと気になってたんだ』



「きききき、気になってるですって!! ま、まさか本当に〜」


「…………」(気になって聞き耳立ててる)


「はぅ、禁断の恋っ! ロマンチックゥ〜」





『正しくは粛正しゅくせい部だ』


「こんな名前だったかしら?」


「わ、私は退治部って……よ、呼んで、ますよ?」




『お前をこの部に入らせようとついた嘘だ』


「あれはお前がつけと言ったんだよーー!! あああ適当なこと言わないでー! 私のイメージが」


「おおおおお、おっ、ちついて、くだ……さい」

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