ツノツノツノ

 え、なんでツノ?


 ……早苗さんのおでこにツノが一本生えている。そう、ツノだ。絵本とかで鬼に生えてるやつ。



「……げ、幻覚?」


「いや、現実だ。直視しとけ」


「はぅ、その」


「あわあわあわあわ、こここれは違うのよっ!! そう、コスプレで。そうコスプレなのよ」



 早苗さんは手でツノを隠している。たまにチラッと見える恥ずかしそうに、目を伏せている表情がなんとも言えない、絶妙だ。



 その後ろのマミ先輩がうるさい。自分のことのように手を振り回し、慌てている。あまりにもうるさいから、僕の方がなんか冷静になってきた。



「コスプレなんて馬鹿なこと言わないでください。僕、そんなんで騙されるほど馬鹿じゃないです。マミ先輩」


「う……ぐぅ、それもそうね。ごめんなさい」



 マミ先輩はやっと落ち着いたらしく、ペコリとお辞儀をしてくれた。彼女の長い髪が揺れ、そして視界から消える。



 パタンとドアの閉まる音が響く。



 僕は神宮寺先輩に向き直り、強い口調で話し始める。


「神宮寺先輩。何か事情知ってるなら教えてください。……包み隠さずに」


「いいぞ。ただ、お前が信じてくれるのかどうかだな」


「どうぞ」


 神宮寺先輩は普通だと言わんばかりに、ポツリと呟いた。









「百妖学園の生徒の大半は妖だ。そして残りは妖と人間のハーフ。お前だけが普通の人間なんだ」





 *****






「あ、の。先輩、説明は……神宮寺先輩にま、任せ「わかってるわ、行きましょう」……ん(コクン)」


「……」


「…………」


「またやってしまった〜!! あああああ」


「ぇ、えっと?」


「私、絶対ダメな先輩だと思われてるわよね、これ。でも関口くんも関口くんなのよッ! いっっつも神宮寺先輩だものね、もう」


「マ、マミ先輩はちょっと残念なお姉さんみたいで、その、一緒にいるとたの、楽しいですよ?」


「そうかしら? えへへ〜」


「…………はい」



「私だって喋りたいのに〜。……にしても最近、二人仲が良すぎないかしら?」


「二人です、か?」



「二人は付き合ってるのかしら? あぁ、そうとしか思えないわ」


「――ッ!?」

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