貧乳はステータス
「本当にどれだけこっちが――」
見覚えのある天井。ここは僕の部屋だ。そして僕はベットに寝っ転がっている。
目を疑うほどの大きさのおっぱいが、あった。下からおっぱいを鑑賞できるとか、胸が踊るね。あっ、僕がおかしくなったとかじゃなくて僕の顔の真上に、おっぱいがあるんだ。
触れそうなほど近い。
「おっぱい?」
「ひゃあん!?」
僕がその単語を口にすると揺れた。うん、揺れるね。単語を連呼したからか、おっぱいと気まずくなってしまった。
「……ひ、ひゃあん?!」
「真似しなくていいわよッ! この馬鹿――イテッ」
「いや馬鹿はお前だ。寝ている男の上にまたがるとは、お前は痴女か?」
イテッではすまない勢いで頭を叩いたのは、パソコン部で一緒の一つ上の先輩。神宮寺先輩。
メガネをかけていて、見た目はザ・生徒会長なのに、実際は書記という不思議な人。雰囲気も独特なんだよね、人間離れしてるというか。
「い、息してるか確かめようと思っただけなの!! ……本当よ?」
神宮寺先輩にキャンキャンと言い訳しているのは、これまたパソコン部で一緒のマミ先輩。神宮寺先輩と同じクラスらしい。
多分小野寺さんより大きい。胸が大きくて三つ編みでゆるふわとか。なんか、男のことわかってるな〜みたいな。
「おい、関口……お前」
「ななななんでもないです、よ?」
神宮寺先輩の睨みつける! が発動。僕は寿命が五年縮んだ。……神宮寺先輩はマミ先輩のことになるとこわ「関口」
「……すいません」
この人、エスパーかもしれない。
「ところで。あの〜、ここ僕の部屋でなん――「せき、ぐちくん。だ……ぃじょうぶ?」
僕の寿命が五十年縮んだ! 早苗さんだ。僕が間違えるはずはない。
早苗さんは先輩たちよりちょっと後ろに下がって、僕を見つめていた。チラチラと見える瞳は怒りに滲んでいて。ん、怒り? どうやら早苗さんは怒ってるらしい。
「さ、早苗さん? もしかして怒ってるのかな」
「……心配して、たんです。関口くん、ぁぶな、かったんですよ?」
危ないだって? そうだ、あの黒い
確か飲み込まれそうになった時に、マミ先輩に罵られたんだ。そうだ、思い出した。
「……あれはいったいなんですか」
「ハンッ、話さなきゃいけない時が来たわね」
マミ先輩が中二病っぽくポーズをとる。冷めた目の神宮寺先輩を気にせずに、自分のペースで話し始める。
「まずね、関口くん。アンタ……馬鹿なの?!」
「いきなり罵られたッ! 心の準備させてください、先輩」
「なんの心の準備だよ」
神宮寺先輩は素早いツッコミで、僕に目で訴える。はやく進めろと。いや、僕に言われてもなーって感じなんですけど。
「関口くんはこの学園の生徒なのに、何も知らないなんて。百妖学園の生徒の大半は――」
「関口くんは、お胸が大きいほ、うがいいんですね!! わたわたわた――私は、私は……うぅ」
早苗さんが取り乱した。僕は急いで気の利いた言葉を考えるけど、うまく浮かばない。
……僕は固まってしまった。本当はマミ先輩の話を聞かなきゃいけないはずなのに、早苗さんから目が離せない。早苗さんの瞳からはぽろぽろと涙が溢れ出ている。マミ先輩はまだ話し続けている。
「うぅ、ずるい。ずるいです、私だって……私だって大きくなりたいのにッ!」
「……だからね、私が言いたいのは――」
「大丈夫だよ、早苗さん。貧乳はステータスなんだから!!」
「せき、ぐちくん」
早苗さんは僕の言葉に感動してくれたのか、手を握ってくれる。温かいぬくもり、女子と初めての手つなぎ(?) なんだか、幻覚が見えてきた。
ずっと黙ってた神宮寺先輩が口を開いた。
「ところで、早苗。お前、ツノが関口に見られてるがいいのか?」
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