自称『ぼっち』



「はい。では、百妖学園にふさわしい行動を常に心がけるように」


 百妖学園。僕たちが通っている学園だ。普通の高校なのに、あまりにも凄そうな名前だと僕は思ってしまうんだけど。



「ん、そうそう。それと席替えは明日からでね。はい、さよなら」



 相変わらず適当な先生だ。女の人って几帳面な人が多いイメージなのは僕だけなのかな。担任の先生はチャイムがなって、チャチャっと終わらせると教室を出て行ってしまった。


 そんな適当なHRの後、僕のもとに誰かが来た。香水の匂いがする。




「マジ残念だわ〜。関口と離れるなんて! なんで関口は後ろなんだよ〜」



 ギャルっぽいが意外と真面目な小野寺さん。目がパッチリしている。*そして胸がでかい。小野寺さんが僕の机にドカリと座る。


 ポニーテールで、なぜか髪の先がクルクルしている。あれはどうやってクルクルにしてるんだろ。ちょっと気になるや。



「さぁ? でも授業寝れるからね、ラッキーだよ」


「あー、そりゃいいわ〜。でもクラスの学級委員が、そんなことを言っちゃってもいいわけ〜」


「いや、小野寺さんに押し付けられただけだしね!」



 クラスの最初。高校生になって友達かな? って人がちらほら出てきた時だった。まあ、僕はそんな人はいなかったけれど。僕たちは学級委員や図書委員などを決めなければいけなかった。


 みんな、早く帰りたかったんだ。





〈回想〉



「では学級委員になりたい人〜」


 僕は一番前の席だった。日直だった小野寺さんが僕の目の前で、黒板に文字を書いている。



 静寂に包まれる僕たちのクラス。



 ……うん? だいたいここで一人ぐらいは手を挙げるものだと思うんだけど。それで二人出てきたら選挙みたいな。演説の開始なんだけど、誰も出てこない。



「わたくしがやらせて頂きます! どうか、清き一票を」みたいなキャラが出てくるんだけど、普通。



「あるえ〜、誰もいないの〜?」


 シーン。


 目をそらしてるやつもいる。あとふて寝してるやつは起きてっ!!



「あっ! 関口〜。学級委員やらないかな? どうかな〜どうかな〜」


「はい?」


「さんせーです」「いいと思いまーす」



 待って、待って。待ってよ、小野寺! なんで僕? いや、誰だよっ。賛成してるやつは。



「関口は〜中学の時クラス委員やってたから〜。経験豊富だし〜、いいかな〜って」


 僕を指差し、一番言って欲しくないことを言ってきたぞ! この人は。あれは頼まれただけだから! ……代役だっただけだから。


「でも、ぼ、僕は……」


「ダメかな? 私もサポートするし……ね?」



 小野寺さんがシュンと落ち込んだような顔をすると、一部(男子)からキツイにらみが飛んでくる。


「…………やります」


「やった〜! 関口、ありがとう〜」



 小野寺さんはとびっきりの笑顔を見せて抱きついてきた。



「サービスゥ、サービスゥだよっ」


 僕の耳元で囁いた。香水の匂いで頭がクラクラする。柔らかなマシュマロみたいな、その……お、おっぱいが僕の腕に当たっているというか当てられてるんだ。


 今思えば、小野寺さんがやけにニコニコしていたなぁ。突き刺さる視線の数々。なぜか薄ら寒くなる背中。僕は後ろを振り向くことができなかった。




 そして僕は変わった奴らにしか、話しかけられることのない『ぼっち』になった。



 えっ? それは『ぼっち』じゃないって? だって二人しか話しかけてくれないんだよ。ほら、『ぼっち』でしょ。



 あぁ、神様。頼まれたら断れない、この性格。誰か直す良い方法知ってませんかね?



〈回想終わり〉





*****




「小野寺さん、香水変えた?」


 甘い香りがする。なんか美味しそうな匂いだ。ケーキかな?


「おっ、気づくんだ〜。いいじゃ〜ん、うん変えた」


「いい匂いだね!」


「ちなみに香水じゃなくてコロンだから。香水だともーっと匂い強いよ」


「へ!? そうなの」


 へぇー知らなかった。勉強になるなぁ。

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