ラノベにわかの自称ぼっちは、ヤンデレと妖からは逃げられない

子羊

不安の席替え



「えっとどうしよ。早苗さんの隣だ」


 僕は黒板に貼り付けてあった紙を凝視し、つい呟いてしまった。


 僕の名前、関口の隣に早苗の文字が。つまり僕の席の隣は早苗さなえさん。


 今回の席替えは第二回目。しかも楽しい楽しいくじ引きだったんだ。やっぱ、あみだくじよりもくじ引きだよね。




 何より結果が良かったら、楽しい思い出だっただろう。


 早苗さんの隣か、なんか不安だな。思わずため息をついてしまった。



 僕のクラスは二十人クラス。でも人の出入りが多いからかな? 明らかに人数多すぎな時と少ない時がある。



「いっーーやっほーーい!!」



 クラス一の美人、くちなしさんの隣になれて喜んでいるらしく、うるさい。



「あっ、くちなしさん。口紅真っ赤で似合うね!」


「え? ありがとう」


 僕がいきなり話しかけたのに嫌な顔せず、ニコリと微笑むくちなしさん。彼女は特に赤が好きらしく真っ赤なマニキュアと口紅が目を惹く。髪が真っ黒だから赤が余計に綺麗に見える。


 そんな美人の隣に座れるなんて……。


「やったぜーーー!!」


 まぁ、とにかく動物園の猿かっていうくらいうるさいこいつは僕の友達の岡村、野球部で当然丸刈り。僕は丸刈りが嫌だからなのと、運動が苦手だから部活を誘われた時にすぐに断った。



 そして僕はパソコン部に入った。


 いかにも地味だと思うでしょ? 実際地味だ。でも僕は緩い雰囲気が好きなんだ。そして隣の席になる早苗さんも同じパソコン部なんだよね。一言も喋ったことはないけど。



 勇気を出して、「席替えろよ! 前じゃないと見えねーんだよ!」とか喚いてみようか? そんなことしたら、間違いなく職員室行き決定だ。



「諦めも肝心だよね」


「何が?」


「お前が羨ましいって話だーー岡村っ!! この猿野郎めっ」



 僕は岡村に向かって消しゴムを飛ばしたが、流石野球部。キャッチされてしまった。


「でも羨ましいな。早苗の隣だろ?」


 岡村がニヤリと笑う。っていうかなんで呼び捨てなんだよ。仲良くなきゃ、さん付でしょ、普通は。



「は? なんでだよ。話したことないよ、僕」






「普段は前髪長くて顔見えないけど、結構綺麗な顔してんだぜ。あいつ」




 岡村のその言葉にちょっぴり、ちょっぴりだけ興味湧いてしまった。

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