四神宗家の成り立つについて
花国は、
ここで、皆は気がつくだろう。女王陛下がおわします王都“
その理由は、花国の国造り伝説から伺うことができる。
《
花国を建国した初代女王・
彼らは、兄弟姉妹とても仲が良く、女王であった母を万事にあたり、助けたと言われている。
そんな彼らを信頼していたのだろう。
女王黄明花は臨終の時に、子どもたちを枕元に呼んで、このような遺言を遺したという。
“次男である王子には、北の地を。
長男である王子には、西の地を。
三男である王子には、南の地を。
三女である王女には、東の地を。
そして、長子で長女である王女が、黄王家を継ぎ、国を治めよ。”
と。
この遺言を誠実に守った彼らは、母王の喪があけたのち、それぞれの地に旅立った。
ちょうどその頃、建国に貢献した
北の方位四神である
西の方位四神である
南の方位四神である
東の方位四神である
……というように。
そこに、何かに導かれるようにやってきた王子と王女は、それぞれ旅先で、四神と出会う。
四神が花国の守護神となったことを知り、深く感謝した彼らは、それぞれ四神を
それを知った彼らの姉でもある花国第二代目女王・
……というように。
後に、この四神を祀る四氏族は、四神宗家と呼ばれるようになり、黄王家の次に尊き家とされるようになった。
「“…………そして、黄王家は女系となり、代々黄の一族の王女が王位を継承し、女王として国を統治するようになりました。” はい、お終い」
月影は、そう言って話を締めくくる。
月影の可愛い二人の弟妹は、読み聞かせをしてくれた兄に、感謝の気持ちを込めた、拍手を送った。
「わぁ――、兄上! ありがとうございます!」
「にいさま、ありがとう!」
二人は、満面の笑みを浮かべる。
そんな愛らしい弟妹の頭を交互に撫でると、月影は気がつくと上機嫌になってこう言っていた。
「大したことではないんだ、また時間があれば、読んであげるよ」
「楽しみにしています、兄上!」
「やったぁ、またよんで、よんで!」
二人の笑顔が、さらにぱっと輝いた。特に月華なんかは、飛び跳ねるくらい喜んでいる。
本当に、素直で可愛い弟妹たちだ。月影は、改めて、この上ない弟妹を産んでくれた母に、そして彼らと出会えた奇跡に感謝した。ありがとうございます、母上、神さま。
そして我らが祀り奉る白虎の神よ、僕が愛してやまない家族と、白西州の民を、これからもお守りください。と心の中で祈った。
そんな弟妹たちの生活を、守りたい。だからこそ、自分が王都に行かなくては。そう、月影が覚悟を新たにしていると。
とん、とん、とん。
室の扉を叩く音がした。
「失礼いたします。お坊ちゃま方。
「寿里? いいよ、お入り」
そういうと、月影は室の扉の前に立っているであろう、古参の侍女に入室を許可した。彼女は、もう一度、失礼いたします。と言って、音もなく室に入ってくると、月影たち兄弟妹に、頭を下げた。
彼女の名は、
そんなある意味頭の上がらない相手に、月影は穏やかに微笑みながらも、あくまでも淡々とした声で問いかけた。
「寿里。用件は?」
「はい。月影坊ちゃま。若奥さまが、月華お嬢さまをお呼びにございます」
寿里は月影の質問に、頭を軽く下げて、応える。
月影は、来たか、と思った。実は、月影は母にあるお願い事をしていたのだ。それ故に、月影は首肯すると、月華の方に顔を向けた。
「母上が? わかった。月華、母上がお呼びだ、お行きなさい」
しかし。
「ええぇ――――――っ。わたしは、もっと月影にいさまと、一緒にいたい――――」
月華は嫌々と頭を横に振った。いつもは聞き分けの良い彼女にしては、珍しく子どもらしく駄々をこねる。
そんな彼女にすかさず竣影は、しっしっと追い払うように言った。
「こら月華。我がまま言って、兄上や寿里を困らせるんじゃない。ほら、いいから行って来い」
竣影の、追い立てるような言い方に、月影は苦笑した。
竣影は、心根の悪い子では無いのだが、なぜか月華に対しては厳しいところがあるな。だから、二人の仲が良いのだから仲が悪いのか、いまいちよくわからない。う〜ん、理由は何だろう?
と、考えてみる月影ではあるが、彼にはよくわからなかった。
それは、取り敢えず置いといて。
「月華。お行きなさい。母上を、あまりお待たせしてはいけないよ」
月影は、ゆっくりと諭すように月華に言い聞かせた。
唇をとがらせていた月華は、目線を下げる。
「……………………はぁい。わかりました、月影にいさま。にいさまの、おっしゃる通りです。あまり、お母さまをお待たせするのは、良くありませんね」
そう言うと月華は、不満そうな表情を改めた。すっと、彼女の纏う空気が変わる。
月影の幼い妹から、珀本家の令嬢の顔をした月華は、椅子からそっと立ち上がると、二人の兄に向かって、綺麗に一礼した。
「月影お兄さま、竣影お兄さま。珀氏月華、これにて失礼いたします」
完璧な礼を兄たちに捧げた月華。そんな彼女に、月影は優しく笑いかけた。
「月華。行っておいで」
「はい。ありがとうございます、月影お兄さま。寿里、先導してちょうだい」
「はい。わかりました、お嬢さま」
月華の教育係である寿里も、彼女の姿に満足そうに笑うと、扉の方へ向かった。彼女は、月華のために扉を開くと、最後に月影と竣影に向かって再び頭を下げて退出した。
月華と寿里が、月影と竣影のいる室から遠ざかっていく。
彼女たちの気配が完全に消えるまで、月影は一言も発さずに、それを見送ったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます