第21話

ガーゴイルの野郎、私の見間違いじゃなけりゃ、影の中に入りやがった。


まさか……




「お前たち、手を出すな」




「……シンゲツ?」




 前に出たのは、シンゲツ。


こいつじゃ、どう頑張ってもガーゴイルには勝てねーだろ。




「馬鹿言ってんじゃねぇよ、殺されっぞ!」




「俺は、お前に負けて、改めて自分の力を見つめ直した。 そして、この力を手に入れた。 エクサ・サイズ、act2!」




 そう叫ぶと、シンゲツの体に異変が起きた。


出ていた腹が凹み、胸板が厚くなる。


そして、軍人みたいなたくましい体へと変貌してゆく。




「カンナ、お前のことは大嫌いだったが、お前がいなけりゃ、ここまで成長することは出来なかったぜ」




 今までは、せいぜい贅肉が引っ込む程度だったのに……


影から現れたガーゴイルが、レモンを狙う。




「させるかよ!」




 すかさず、その間に割って入り、シンゲツとガーゴイルの戦闘が始まる。


シンゲツが上下左右から鎌を繰り出し、反撃の隙を与えない。


その勢いは凄まじく、周りの土埃が舞い、竜巻のようになって風を巻き起こす。




「す、すげぇ!」




 とうとう、一太刀の反撃も受けず、ガーゴイルを弾き返した。




「……」




「今のはせいぜい50パーセントだ。 次は、本気で行く!」




 おいおいマジかよ!


シンゲツの奴、まるで主人公みてーじゃねーか。


シンゲツが、ガーゴイルに突撃しようとした時だった。




「ウゴゴ……」




「……!?」




 ガーゴイルの体に異変が起きた。


体が盛り上がり、メキメキと音を立てる。


そして、体が分裂した。




「おいおい、2匹になっちまったぞ……」




 こいつ、シンゲツの身体操作を学習したのか?


多分、私の考えは正しい。


そうやって、クロサキの影に潜る能力も学んだんだ。


 2匹のガーゴイルに挟み撃ちにされたシンゲツは、今度は防戦一方。


鎌で攻撃を受けるのがやっとの状況だ。




「はあっ、はあっ……」




 シンゲツの肉は引き裂かれ、血が地面に滴る。


一旦離れたガーゴイルは、更に分裂し、合計4匹。




「こんなん、無理ゲー、だろ……」




 私が加勢に加わろうとした時、レモンが叫んだ。




「カンナ、逃げてこの状況をゲッコウに知らせて! このままじゃ、全滅する」




 そういうと、レモンはシンゲツの方へと駆け出した。


くそっ……


私は、ウォーリーを抱えて、バイクに跨がった。

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