第19話
闇夜の中に、ぼんやりと相手の姿が浮かぶ。
私の目の前にいるのは、やせ細った少年。
その少年が、私の気配を感じ、声を立てた。
「……うわあっ!?」
「でけー声、出すんじゃねーよ」
「死神か? 俺を、殺しに来たのか?」
「どうかな。 ただ、いくつか質問に答えて貰うぜ」
停電している内に、私は牢屋まで潜入し、そこにいる警備を催眠状態にして、こいつのことを聞き出した。
名前はシン。
19の時に、ピザ屋の従業員5人を殺して、懲役80年を言い渡されたらしい。
当時、死体は素手でちぎられたみたくなっていて、現場は凄惨な状況だったとの事だ。
こんなやせ細った奴が、人の体をバラバラに出来るとは思えない。
「お前、ガーゴイルか?」
「は? ガーゴイル? 意味が分からない……」
「しらばっくれても、無駄だぜ」
私は、鎌を取り出し、ゆらゆらと揺らした。
シンの首が、くたり、ともたげる。
「もう一度聞く、お前は、ガーゴイルか?」
すると、シンはクック、と笑い、供述を始めた。
「……俺が目覚めたのは、ピザ屋でバイトをしてた時だ。 先輩らのイジメを受けていて、ある日、ぷっつんした。 気付いたら、みんな死んでたよ」
「お前が、近頃話題になってるガーゴイルか? もしそうなら、どうやって外に出て犯行を重ねている?」
「そこの警備に、金を渡したんだ。 奴は金に困っていたから、俺が外から調達してきてやると」
……なるほど。
そこの警備とこいつは、グルだったのか。
「一体、何のつもりで10人も殺した?」
「……憂さ晴らしだよ。 ムショの中でムカつくことがあった日に、俺は表に出る」
それで、ケイトまで手にかけやがったのか……
こんな檻、クソの役にも立たねーじゃねぇか。
「今夜、表に出ろ。 私が相手になってやる」
「……嫌だね。 今日はそういう気分じゃないし」
どうやってこいつを表に引きずり出す?
チンタラしてたら、電気が復旧しちまう。
……ダメだ。
焦ってたら、余計頭、まわんね。
一旦出直すか。
「私はあんたの死神だ。 絶対に、逃げらんねーぞ」
「……」
私は、捨て台詞を残して、刑務所を後にした。
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