第17話

引き出しを引っ張っると、どこかで見たことある死体が、中に入っていた。


ケイトだ。


私は、後方へとステップを踏んだ。




「……死体を見て、驚かれましたか?」




「……いや」




 ウォーリーを守るための咄嗟の行動。


ケイトが蘇ったら、こいつのことを連れ去ろうとするかも知れない。


だが、優先すべきは、任務だ。




「……始めてくれ」




「始める前に、一つ。 私が呪文を唱えると、死者が目を覚ましますが、彼らは気が立っています。 出来るだけ刺激しないよう、質問を投げかけるのです」




 マジでか…… 


鎌を片手に持ち、私は、コクリ、と頷いた。




「では、オホン。 始めましょう。 ウヘン、ゴホン、ムフン、あー、あー…… ゴフッ……失礼。 あー、あー、らららー、ドレミ~」




 おいおい、準備なげーな。


別に、美声披露する必要ねーから!


と、思った瞬間、死体がムクリと起き上がった。




「……ウォーリー」




 私は、ビクッ、とした。


棺から出てきたケイトは、腹が抉れている。




「あなたが、ウォーリーの面倒、見てくれてたのね。 ありがとう、もういいわ。 さあ」




 ケイトが手を差し伸べてくる。




「ふ、ふざけんな。 ウォーリーは、私が面倒みんだ」




 ……おいおい、何言ってんだよ。


こいつに、少しの間預けるだけでいいんだ。


しかし、考えとは裏腹に、ウォーリーを抱えている腕に力がこもり、ぐっ、と自分の方に引き寄せる。




「まーま、まーま」




「ウォーリーは私の子よ、返して!」




「カンナ様、一度、彼女に赤ちゃんを……」




 ……クソ。


どうかしてるぞ。


自分でも気付かない内に、こんなにウォーリーに愛着が湧いてたとは。




「……大事にな」




 私は、ケイトにウォーリーを抱っこさせた。




「ウォーリー、無事で良かったわ」




「みーみ、みーみ」




「ごめんね。 もう、ミルクは出せないのよ」




 ちぇっ、何だよ。


ウォーリーのやつ、私が抱っこしないと、いつもぐずってたクセによ……




「……満足したか? ウォーリーを返しな。 それと、質問させてもらうが、あんたを殺したガーゴイルは、どこにいる?」




 ウォーリーを、ケイトの腕から奪い取る。


しばらく、物推しそうな目でこちらを見ていたが、口を開いた。




「……キタノ区2-275番地」




「オーケー、行くとするか」




 私は、さっさと安置所を後にした。






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