第16話

部屋に戻って身仕度を整える。




「また、黒い僧衣に逆戻りか」




 浴衣を脱ぎ捨て、落ちてる僧衣を拾い、羽織る。


まあ、これが一番しっくりくるんだけどな。




「いくか、ウォーリー」




「だあ、だあ」




 私は、ウォーリーを抱えて受付に向かった。




「おはようございます」




「ああ、鍵、返しとくぜ」




 鍵をカウンターに置いて、旅館を去ろうとした時だった。




「お2人で、620ドルになります」




 ……は?


レモンの野郎、金、払ってくれてたんじゃねーのかよ!


財布を取り出すも、中には100ドル札2枚しかねー。


……催眠で眠らせて、逃げっか。














 バイクでハイウェイを走る。


金は払わず逃げようとしたが、少し罪悪感を感じたため、200ドルだけカウンターに置いてきた。


つか、よくよく考えて、あのぼろ宿で600ドルは高すぎるし、何より、2人分払う意味がわかんねーから、200ドルが妥当な線だろ。


んなこと考えてる内に、イーストシティが見えてきた。


イーストシティはかなりの都会で、遠くから摩天楼がニョキニョキ連ねているのが見える。


待ち合わせ時刻まで、あと30分。


私は、アクセルをふかした。














 下道に降りて、イーストシティに入る。


死体安置所の駐車スペースにバイクを止めると、鎌を背負い、ウォーリーを抱えた。


そのまま、建物に向かうと、扉の前にローブを着た男が棒立ちしている。


祭司みたいな感じだが、奴が今回の任務のバディか?




「……よう」




「待っていましたよ。 中へ」




 やっぱりこいつが私のバディか。


建物に入り、地下に降りるエレベーターの中で、私は質問した。




「あのさ、名前、教えてくんね? ガーゴイルを捕まえるまで、一応、バディな訳だし」




 すると、死神っぽくない目の前の男は、こちらを振り向いて答えた。 




「申し遅れました、私の名前はスター。 普段は神父をしております」




 スターか。


死神が神父をしてるとは、何かミスマッチな感じだけど。


地下に到着し、通路を進んで、つき当たりの二枚扉を開けると、冷気が吹き込んできた。




「ひんやりしてんな」




「死体を安置しておりますので」 




 真っ白い部屋の壁一面に、銀色の引き出しがある。


あれを引っ張ったら、文房具の代わりに、死体がおはよーする訳だ。




「そういえば、あんた、鎌は?」




「鎌は、このネックレスです」




 やたら小っちゃい鎌が、首からぶら下がっている。


わざわざでかいやつを持ち歩かなくても、オッケーってことか。




「なるほどな。 神父が鎌持ち歩いてたらおかしいし、いんじゃねーかな」




「では早速、死者と対面しましょう。 確か、E列の56番でしたな」




 E列の56番とやらの引き出しの前に移動すると、取っ手を掴み、手前に引いた。


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