第13話

 風呂は個室で、私はウォーリーと一緒に湯船に浸かった。




「ふぅ~、生き返るわ。 てか、何かこのお湯、すっぺーな」 




 多分、湯畑を通ってる間に木の渋みが付いちまったんだろう。


お湯の温度も熱めで、窓を開けて外気を入れないと、すぐ上せそうだ。




「レモンと勝負したら、また汗かいちまうな。 終わったら、もうひとっ風呂浴びるか」




「だあ、だあ」














 風呂から上がり、ウォーリーを受け付けの兄さんに預け、私はレモンの元へと向かった。


途中、バイクに置きっぱなしにしていた鎌を背中に携える。


坂を下って、湯畑の前までやって来ると、小ぶりな鎌を持ったレモンがいた。


相手の正面に立つ。




「お前、私を逃がしてくれんじゃなかったのかよ?」




「他の先輩に、手柄横取りされたくなかったので。 それより、先輩がかくまってる赤ちゃん、生かしておいたらマズいです」




 ウォーリーのことか?


何が一体、マズいんだ?


そんな私の考えを見透かしたかのごとく、レモンは説明を始めた。




「彼、戦神オーディンの生まれ変わり、らしいです」




「……オーディン?」




「1000年前、死神はオーディンに滅ぼされかけたんです。 もし、彼にオーディンとしての自覚が芽生えたら、今度こそ死神は滅ぼされてしまいます」 




 ……そんな仲悪りーのか?


死神とオーディンとやらは。




「ウォーリーはただの赤ん坊だし、お前らが殺そうとすっから、ケンカになったんじゃねーの」




「……引き渡す気が無いなら、死んで貰うしかないですね」




 レモンは鎌を握り、私目がけて振り払った。


鎌から刃をかたどった、液体が放たれる。


その液体がかかった地面が、ジュウ、と音を立てて溶け出した。 


硫酸だ。


私は、液体を避けて、背中の鎌を手に取り、駆け出す。




「……ん」




 レモンは後ろに向き直り、路地裏へと走り込んだ。


後を追う。 


すると、待ってましたとレモンが小ぶりな鎌で切りつけて来た。


最初の攻撃は、ここに誘い込む為の布石か。


私の大鎌じゃ、壁が邪魔で振れねー。




「……とでも、思ったか!」




 私は、鎌を握りしめ、壁ごと振り払った。

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