第10話

日が大分落ちてきた。


さっきのラインの内容は、宿泊先に関する情報だったが、予約してあるホテルは偶然にも、クサツの旅館だった。




「ぜってー罠、だよな……」




 夜道をバイクで進む中、ボソリとつぶやく。


だが、レモンがどんな罠を張ってんのか、少し興味がある。


つか、そんなもんにいちいちビビってらんねー。


ハイウェイから下道に降り、周りが畑の一帯を進む。


しばらくして、湯気の立ち上る温泉街に到着した。




「ウォーリー、着いたぜ」




「……だあ、だあ」




 バイクを旅館の駐車スペースに置いて、ウォーリーを抱えて中に入る。


旅館の名前は「またたび」


ボロ…… 雰囲気のある建物で、引き戸をガラガラと開けると、女将ではなく、猫が出迎えてくれた。




「みゃ~ん」




「今日、予約してあるカンナっす。 上がってもいいんすか?」




 猫はそのままスタスタと奥へと向かう。


ラインには、105号室で予約してあると書かれていた。


とにかく、この猫についてってみる。




「105号室、ここか」




 襖を開ける。


部屋の広さは、10畳程度の畳部屋で、テーブルに菓子とお茶、その他にはテレビが備え付けられている。




「浴衣とか、ねーの?」




「にゃ~ん」




 私の問いかけに答えて、猫は後ろのかごを指さした。


そこに、浴衣が畳んで置かれてある。


説明を終えると、猫は部屋から出て行った。




「……さて、どーすっか」




 飯にするか、温泉にするか。


ここは確か、湯畑が名物だったハズだ。


湯畑っつーのは、要するにあっつい湯を空気で晒して温度調節する装置で、見た目は流しそうめんみてーな感じだ。


スマホの画像でしか見たことねーけど、生で見ときてーな。




「よし、決めた! まずは飯、んで、湯畑見てから温泉だ。 ウォーリー、それでいいべ?」




「だあ、だあ」




「決まりだな」




 私は、ルンルン気分で浴衣に着替え、外へと出た。




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