第9話

道端をうろついてるのは、ババアだ。


私は、サイドカーを止めて、ババアに詰め寄った。




「婆さん、こんなハイウェイのど真ん中で、危ねーぜ」




「ちょっと訪ねたいんじゃけども、孫の家はこっちかい?」




 いやいや、こんな果てしなく続く道の先に、孫の家はねーんじゃねーかな?




「婆さん、住所とかちゃんと確認したか? ぜってーこっちにはねーぜ」




「もういいぜ、下がってろ」




 その時、婆さんとはまた別な声が響いた。


そして、頭上から黒い僧衣を羽織った、中肉中背の男が、鎌を振り上げて私の方に向かってきた。




「ちゃんと金は貰うからね!」




「分かってるよ」




 こいつら、グルか!


私の親切心を利用しやがるとは、許さねぇ。


振り上げた鎌が、私の頭に刺さる。


だが、その鎌は、私の皮膚を凹ませたにとどまった。




「なっ、馬鹿な!」




「全然効かねーな」




 私は、グーで相手の顔面を殴りつけた。


がはっ、といううめき声を漏らす。




「おらっ、死ねっ、死ねっ、死ねっ」




 私は、倒れた相手に容赦なく足蹴をかます。




「や、やめでぐだざいっ、死んじゃいまずっ」




「うるせーよ、おらっ、おらっ」




 相手は、ぐったりして鎌を落とした。


すると、体型が中肉中背から、ただのデブへと変化した。




「あん? お前、シンゲツじゃねーか」




 シンゲツは、身体能力がアップする、エクサ・サイズという鎌を持っている。


体型まで変わるとは知らなかったが。




「何が、能力アップだ。 安パイ切ってんじゃねーぞ」




 シンゲツを倒すと、今度は背後からパチパチ、という音が聞こえた。




「先輩、流石です」




「……おめー、レモンか」




 レモンは、確か14才で死神になった、最年少死神だ。


今年でまだ16だったかな。


月間最優秀死神にも選ばれてたし、業界じゃ結構評判がいい。




「先輩、私が他の死神を撒く手伝いをしますよ」




「おめー、さっきツイートで私を倒すのに賛同してなかったか?」




「あれはフリですよ。 この先の田舎町にホテルを予約してあるんで、行きましょ。 私、自転車なんで、先行ってます。 詳細のライン、見といて下さい」




 チリン、とラインを通知した音が鳴った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る