第6話

「ガシャアアアン」




「やっべ!」




 ここは、私の働いているレストラン。


私は、厨房で皿洗いとして雇われている。


同僚のクソババアが詰め寄って、キンキン響く声で私に言った。




「あんたね、今年に入ってから387枚目だよ! ホント、使えないったらありゃあしない!」




「……すんません」




 皿割ったくらいで、ガタガタうるせーババアだ。


しかも、律儀に数えてやがる。


毎日毎日小うるせー上に、私のことを使えないだの、皿洗い向いてないんじゃないかしら? とか言ってるのを廊下で盗み聞きしたこともある。


思い出しただけで青筋立ちそうだわ。














 家に帰り、妹のツキコに話す。




「なあ、お前死神だろ? あのババア、ぶっ殺してくんねーか?」




 私とツキコは一緒に暮らしている。


ツキコには彼氏がいて、近々、この家を出て新居に移るらしい。




「依頼が出てない人は殺せないよ。 それに私、死神辞めるし」




「だよなー。 私も玉の輿に乗りてーわ」




「その性格じゃ、無理」




「くっ……」




 よく、私に彼氏が出来たら天変地異が起きる、とか言われてたけど、幸運なことに、まだ私に彼氏が出来た試しはない。


憂鬱だ。


何か、憂さ晴らしはないものか……




「……そーだ」




 ツキコの部屋にしまってあるでかい鎌。


あれを拝借して、あのババアをビビらせよう。


私は、悪巧みを思いついたクソガキみたく、にっしっし、と笑って眠りについた。












 翌朝、いつも通り出勤。


ツキコはその月のノルマをこなしたから、今日以降暇で、彼氏のとこにいる。


私は、持参した鎌をババアの帰り道の草むらに隠した。




 仕事が終わり、ババアの帰宅ルートに先回りして、私は飛び出した。




「よう」




「な、何!?」




「私、実は死神でよ。 あんたを殺すよう、指示が出たんだ。 悪く思うなよ」




 内心、笑いをこらえるのに必死だったが、女優ばりに演技してみせる。


だが、異変が起きた。




「うっ……」




 ババアが突然、倒れた。


心臓発作だ。


そして、死んだ。




 この後、ツキコは死神の鎌を他人に渡し、しかも、それが原因で罪の無い一般人が死んだという事実から、死神の免許を剥奪。


禁固1年の罪に問われ、婚約破棄。


私の方は、事故とは言え、懲役5年を言い渡された。


出所してから、私はツキコの後釜としてスカウトされ、現在に至る。


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