第2話

連中に声をかけると、スキンヘッドの男が返事をした。




「死神が何の用だ?」




「バイク、貸してくんねーか」




「生憎、貸してやれるのはねーよ。 あんたらは、街の治安維持にも一役買ってるし、協力してやりてー気持ちはやまやまなんだけどな」




 私ら死神のターゲットの中には、凶悪な殺人犯とかもいる。


合法的に人を殺せるのは、私ら死神だけだし、ありがたく思ってる市民もいるだろう。


だがまあ、基本的には、物騒な連中って認識だ。




「仕方ねーか。 他、当たるわ」




「ちょっと待て、その小脇に抱えてるの、赤ん坊か?」




「そーだけど」




 スキンヘッドに、ウォーリーを見せる。


すると一瞬、ぐずったような顔になった。




「おっと、これ以上近づくな」




「……あんたの子供か?」




「いや、ホテルに捨てられてたんだよ。 こいつの母親がイーストシティにいて、会いに行かなきゃならねんだ」




 すると、スキンヘッドは携帯を取って連絡を始めた。




「知り合いにサイドカーを持ってるやつがいる。 話、つけてやるよ」




「マジか!」




 こいつ、困ってる奴は放って置けない性質とみた。


スキンヘッドは、携帯をしまって私の方を向いた。




「1週間で50ドルだ。 それで、レンタルしてもいいってよ」




「超、格安じゃねーか!」




 普通、ハーレーみたいなバイクは1日でも50ドルはかかる。


まさに友達価格だ。




「あと、おめえら。 コストコ行って、粉ミルクと紙おむつ、買って来てやれ」




「紙おむつっすか」




 ヤンキー座りをしていた、仲間の一人が返事をする。




「ちょ、そこまでしなくていいって」




「この先に大型スーパーはねえ。 ここで買っといた方がいざって時、助かるぜ」




 確かに、私にミルクは出せねーし、備えあれば憂いなしだ。


しばらくして、サイドカーにミルクと紙おむつを積んで、仲間がやって来た。




「全部で152ドルだ」




 私は、財布から札を取り出し、渡した。




「サンキュ、釣りはいらねーよ」
















 キーを回して、エンジンをふかす。


しばらく荒野を進んで、ロズウェルで一泊すればいいだろう。


さっき、スキンヘッドに言われた通り、粉ミルクを溶かして、母乳ビンでミルクをやったから、今はすげー大人しい。




「あいつ、子育てしたことあんのかな」




 私は、そう独り言ちて、アクセルを握った。


その時だった。


携帯に着信が入る。




「……任務のメールだ」




 内容を確認する。


ロズウェルにある、スターバックスの入って左手のソファに座っている男を殺せ、とのことだ。


事由としては、男はこの後、銃を店内で乱射する予定らしい。




「了解!」




 私は、返信メールを送った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る