守護者は死神

@moga1212

第1話

 私の名前はカンナ。


職業は死神だ。


常に戦いに明け暮れている。


死神の仕事で勘違いされがちなのが、死神は一方的にターゲットの命を奪うっていうことだ。


でも、実際、そう簡単にはいかない。


ターゲットには、守護霊がついていることも多い。


だから、私はこの素芸鎌、エルメスを携えて、任務を遂行する。




 そんなある日、今日も依頼が入って来た。


ターゲットの名前はウォーリーって男らしい。


情報は、この街のホテルの207号室にいるってことだけだ。


私は、エルメスを背中に携えて、ホテルの自動ドアを潜り抜けた。


そして、大股で受付に向かい、カウンターの向こうの男に声をかける。




「おっさん、よーくこの鎌を見な」




「し、死神!?」




 私は、鎌の柄の先っぽを持って、振り子のように揺らす。


すると、受付のおっさんの首が、カクン、ともたれた。


いわゆる、催眠状態ってやつだ。




「207号室の鍵を渡しな」




「……」




 おっさんは大人しく、私に鍵を手渡した。














 エレベーターに乗り込み、2階のボタンを押す。


静かにエレベーターが動くと、チン、という音がし、扉が開いた。




「どっから守護霊が攻撃をしかけてくっか、分かんねーからな」




 私は、いつでもエルメスを抜けるよう準備しつつ、赤いカーペットの敷かれた廊下を進む。


敵と遭遇することなく、207号室の前までやって来ると、受付でかっぱらった鍵をドアノブに差し込み、回す。


ガチャリ、とキーが回ると、扉を開けて中に入る。




「ウォーリーは、どこだ?」




 辺りを見回すが、誰かが泊まっていたとは思えないような、整然とした部屋。


せめて、キャリーバックくらい、あってもよさそうなもんだが。




「ん?」




 ベッドに目をやると、白い布に包まれた、何かがある。


その中身を覗き込んで、私は眉をひそめた。




「赤ん坊じゃねーか」




 赤ん坊は、親指をしゃぶりながら、私の方を見ている。


まさかとは思うけど……


私は、おもむろに白い布をほどいて、紙おむつを外した。




「お前、男か。 お前が、ウォーリー? お前を殺さなきゃ、いけねーの?」




 多分、こいつの面倒を見切れなくなった親が、ここに捨ててったんだろう。


マジかよ……


でも、やらねーと死神の免許はく奪になっちまう。


私は、鎌を振り上げた。














 結局、私は赤ん坊を脇に持って、ホテルから出て来た。




「やっぱ、私には無理だわ……」




 ターゲットは絶対に殺すのが死神のルールだが、私だって女性だ。


こんなガキに見つめられたら、母性本能に目覚めちまう。


降格処分は免れないだろうが、他の奴を殺しまくれば挽回できんだろ。


 ホテルにいた男の話じゃ、207号室の部屋を借りたのは、この先の街に住むケイトっていう女性だ。


その女性の住む街に向かうには、3つの街を経由しなければならない。 


最初に立ち寄るのは、ロズウェルっていう、UFOが落ちたってことで有名な街だ。


私は、移動手段を得るため、そこら辺にたむろしてるバイク野郎のところに向かった。

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